あまたの事業を成功させてきた起業家、ホリエモンこと堀江貴文。時代の寵児といわれ、ITビジネスや宇宙事業など、それまでの常識を覆す手法で自らの構想や事業を実現してきた。ただ、初めからその背景に莫大な資金や、特殊な才能があったわけではない。 堀江自身が好きなことに没頭してきた結果、ビジネスが生まれていったのだ。
起業家・堀江のメッセージは、いたってシンプルだ。
あえてレールから外れよ。
3歳児の気持ちで、のめり込め。
常識とか世間体なんか、ぜんぶ無視だ!
近刊『非常識に生きる』(小学館集英社プロダクション)では「自分の人生を取り戻す」ための、41の行動スキルを指南している。書籍の内容から、堀江が考える「経営者に最も必要な能力」について語ってもらった。
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNS media&consultingファウンダーおよびロケット開発事業を手掛けるインターステラテクノロジズのファウンダー。現在は宇宙関連事業、作家活動のほか、人気アプリのプロデュースなどの活動を幅広く展開。2019年5月4日にはインターステラテクノロジズ社のロケット「宇宙品質にシフト MOMO3号機(MOMO3号機)」が民間では日本初となる宇宙空間到達に成功した。著書に『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』(SBクリエイティブ)、『非常識に生きる』(小学館集英社プロダクション)など1990年代に会社経営を始めた僕は、同年代の起業家たちのなかでも飛び抜けて、成功できたひとりだろう。自分では成功できたとは思っていないのだけど、周りで失敗していく経営者たちを見ていると「それはうまくいかないよなぁ……」と、呆(あき)れつつ思っていたりした。
ビシネスに成功法則は、いくつかある。IT革命でビジネスの常識の大部分が変わったとしても、変わらず法則の上位にあるのは「しつこさ」だ。
昔、日本酒ビジネスを展開している知人に、「事業が赤字になってしまいました」と言われた。原因は、枡を2000個つくったことらしい。大量に売れ残り、在庫があふれ、困っていたそうだ。
僕は「なぜしつこく売りこまないの?」と、不思議でならなかった。
在庫が余っているなら、売っていけばいいじゃないか。
値段を下げるとか、友人や知り合いにしつこく声をかけて、売りこむ努力をすればいい。何かのプロダクトと掛け合わせたコラボレーションや、イベントで限定販売するなど、売れるための仕掛けをするのも手だ。
売れない、だから困っている……なんて、あっさりしすぎている。
しつこく、愚直に、やれることをやりきったの? と、問いたかった。
ビジネスでうまくいかない人はみんな、しつこさが足りない。ある程度のマイナスを受けたとき、そこで諦めたり、「失敗した」と勝手にフィニッシュしてしまう。
損切りの判断としつこさ不足は、別の問題だ。
いくらでも改善できる余地があるのに、試行錯誤を怠けた自分を省みず、挽回を諦めるのは、ただの負け損だ。
いい商品なのは大前提として、売る側にしつこく売り続ける人がいないと、売れるものも売れないのだ。そんな当たり前のことを、多くの人はないがしろにしている。
僕は謙遜でも何でもなく、人より優れた能力は大して持っていない。僕より計算が上手(うま)かったり、情報集めが上手い人はたくさんいると思う。だけど、しつこさだけは、誰にも負けない自信がある。
受験生時代は、しつこく暗記に取り組んだ。1日の時間を、食事と睡眠以外、すべて勉強に使いきった。起業以後は依頼された仕事の質を上げるために、やり直しや改善を昼夜問わず、しつこく繰り返した。
目標を決めて「ここまでやる!」と決めたものを、途中で投げ出したり、諦めたことは一度もない。どんなビジネスでも「まだやるの!?」と呆れられるぐらい、僕はしつこさを発揮してきた。近年いよいよ軌道に乗ってきた、WAGYUMAFIAやロケットの打ち上げも、何年も改善と新しいチャレンジをやめなかった、しつこさが原動力だ。
突破するのに大事なのは、特別なスキルや人脈、運やお金などではない。
折れない心で、しつこさをルーティン化することだ。それだけで、諦めの早い周りの人たちを大きくリードできる。
メガネメーカーのOWNDAYS(オンデーズ)社長、田中修治さんは店舗数が50店あったとき、毎朝全店に電話して、経営状況を聞いていたそうだ。2時間ぐらいかかる、手間のかかる作業だが、従業員たちの気持ちは引き締まっただろう。50店に毎朝電話するというしつこさが、OWNDAYSの堅調な経営を支えている。
仕事がうまくいかない人の原因の大半は、能力よりも、諦めの早さだ。とにかく、しつこくやる! 技術やコツは必要ない。心の覚悟次第だ。
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