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DXに「リスキリング」で対応する “リスキリングする組織”へ転換する4つのステップ(2/2 ページ)

» 2021年04月23日 08時00分 公開
[リクルートワークス研究所]
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 上の図を見てほしい。ステップ1として、新たに修得すべきスキルを可視化する必要がある。「リスキリングとは、事業戦略の変化に伴って新しく生まれる職務や、仕事の進め方が大幅に変わる職務で必要とされるスキルを人々に獲得してもらうことです。つまり、事業戦略と深く結びついているため、社長や経営陣がデジタル時代に自社の事業領域で何が起こり、どのようにビジネスを転換していくかを深く認識していなければなりません。その認識に基づいて、新しく必要なスキルとは何かを明確にしていきます」(石原)。さらに、その新しく必要なスキルと、人々が現在持っているスキルの間のギャップを可視化することが求められる。

 ステップ2では、リスキリングのための学習コンテンツをそろえる。AIとは何か、といった概念的なことばかりではなく、特定のデジタルツールで何ができるのか、ツール上に盛り込まれた機能をどのように使うのかなど、具体的かつ実践的なスキルを学ぶ。「幸いなことにデジタルのスキルの多くは企業特殊性の薄いものです。コンテンツを自社開発することにこだわらず、デジタルインフラやツールを提供する会社などが持っている優れた学習コンテンツを上手に取り入れ、スピード感のあるスキル習得を目指すべきなのです」(石原)

 また、日本企業が得意なOJTは、リスキリングにあっては機能しにくいという。従来のOJTでは、半年、1年かけて先輩などに仕事を教わって習熟していく。「そのスピード感では技術の進化についていけませんし、そもそも、その仕事に就いた人がまだいない新しい仕事なのだから、教えてくれる先輩そのものがいないという問題があります」(石原)

 そして、人々が学習プログラムに沿って学びを効果的に継続できるように、さまざまな形で伴走するのがステップ3だ。学習管理システムを使って、進捗、費やされている時間、理解度や習熟度を観察し、全員が離脱せずに学習を進められるよう支援する必要がある。「フロントラインで、知らない・できない・使えない人が1人でもいると、業務が切り替えられません。結果としてDXが進まないため、離脱者を作らず、全員で前に進む必要があるでしょう」(石原)

 最後のステップ4として、スキルを実践する機会を作る。「そもそもデジタル変革のためにリスキリングをしたのですから、スキル習得したが実践で使う場がない、というのはおかしな話です。現場の仕事をどんどん新しい手法に切り替え、試行錯誤を始めてもらうべきなのです」(石原)

 不況時に人を解雇するのは、次に同じレベルの不況があっても、企業も個人も成長領域へ移行することによって“同じ痛みを繰り返さない”ようにするためだ。日本企業が解雇という選択をしにくいのであれば、代わりにこのような“リスキリングし続ける組織”を作ることが選択肢の一つだろう。

 本記事は『Works』165号(2021年4月発行)「Part 2 社員の能力・スキルの向上と変容をいかに行っていくか」より「方法1:DXにリスキリングで対応する」を一部編集の上、転載したものです。

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