コラム
» 2021年07月28日 05時00分 公開

止まらないウナギロンダリング 漁業者搾取の謎ルールに支えられる「黒いウナギ」に未来はあるか 「土用の丑の日」に憂う(6/6 ページ)

[真田康弘,ITmedia]
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「白い」ウナギへの解決策は何か

 持続可能で合法なウナギをいつでも土用の丑の日に食べることができるようになるためには、(1)一部の自治体にある稚ウナギの取引を県内だけで閉じさせようとする「謎ルール」を撤廃し、取引の自由化を図ること(2)稚ウナギを水産流通適正化法の適用対象とし、取引の透明化を図ること、この2つを同時に実施するべきだ。

 「謎ルール」が撤廃されれば、市場価格に基づかない安値での稚ウナギ買いたたきという採捕者への搾取のメカニズムが解消され、同時に無報告の稚ウナギ流通も大幅に減少することが期待できる。また水産流通適正化法の適用対象となれば、稚ウナギの漁獲量がより正確に記録されるようになるだろう。

 より正確なデータが蓄積されることは、科学的な資源管理に大いに資する。「謎ルール」に縛られてきた稚ウナギの採捕者も、適正な市場価格での販売をすることができるようになるだろう。さらに、トレーサビリティーが確保されることにより、合法由来のもののみが最終消費者に届けられることにつながるはずだ。

 土用の丑の日にウナギを食べる習慣が江戸時代中・後期より根付くなど、ウナギはわれわれの食文化として深く定着した。その国産ウナギの4割から8割が履歴の怪しい稚ウナギであるのは明らかに異常だ。おかしなルールを撤廃し、ウナギにトレーサビリティーを確保する法律を導入することは、わが国のウナギ業界を変える大きなチャンスである。

 水産流通適正化法についてはパブコメをへたのち12月に適用対象を定めた政省令が公布予定とされている。われわれが知らないうちに違法・密輸由来のウナギを購入することを通じて違法行為を結果的に助長し、まっとうな業界関係者を苦しめる負の連鎖が存在している。今がその連鎖を断ち切る、正念場にあると言えよう。

著者プロフィール

真田康弘(さなだ やすひろ)

早稲田大学地域・地域間研究機構客員主任研究員・研究院客員准教授。神戸大学国際協力研究科博士課程前期課程修了(修士・政治学)。同研究科博士課程後期課程修了(博士・政治学)。大阪大学大学教育実践センター非常勤講師、東京工業大学社会理工学研究科産学官連携研究員、法政大学サステイナビリティ研究教育機構リサーチ・アドミニストレータ、早稲田大学日米研究機構客員次席研究員・研究院客員講師等を経て2017年より現職。専門は政治学、国際政治史、国際関係論、環境政策論。地球環境政策や漁業資源管理など幅広く研究を行っている。著書に『A Repeated Story of the Tragedy of the Commons: A Short Survey on the Pacific Bluefin Tuna Fisheries and Farming in Japan』(早稲田大学、2015年)、その他論文を多数発表。


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