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ロコ・ソラーレ本橋麻里代表に聞く「ゼロから強い組織を作る方法」日本カーリング界の歴史を変えた(4/5 ページ)

» 2022年04月23日 05時00分 公開

若くして海外を体験 そこで培った視座

 「17歳のころから海外遠征をすることができて、海外の人って何でこんなにスポーツをうまく使っているんだろうとずっと思っていました。日本とは逆だよな、って。文化や教育の違いがあるにしても、何が違うんだろうと長い間、思っていました」

 本橋は、高校生のころから日本のスポーツの在り方について疑問を持っていた。これは若くして外国文化と触れ合った経験が大きい。

 「欧州に行って衝撃的だったのは、小さな街でもカーリング大会があったことです。また、週末にサッカーの試合があると、全然強くない街のチームをサポーターが情熱をもって応援するので、元気な街に見えるんです。こういう熱気を日本に作っていきたいと思いました。サッカーにはできて、カーリングにはできないと思われがちだったんですが、そういう概念を取り払うべきとも考えました。

 競技を見せる、体験するのは何においても大事なのですが、ほかにも、周りを引き込むことが重要です。『どうやって周りを巻き込めばいいんだろう?』と思っているスポーツ事業者は多いと思います。自分たちは感動しているけど、感動する人たちを増やすためにはどうしたらいいのか。私もずっと考えてきたことです。自分が感動していることは相手にも感動してもらう、ワクワクしているならワクワクしてもらう工夫などを常に考えています」

 もう少し具体的な取り組み方法を訪ねると「田舎でやることです」と即答した。「何にもない街に何かを作るって面白いじゃないですか(笑)」と笑う。この辺りに、彼女の起業家としてのメンタリティを感じる。

 「ロコ・ソラーレでは、街は故郷でもあったので、1回、外に出ると分かるじゃないですか、故郷の匂いとか、空気とか、風景とか……ホッとするというか。それを海外の皆さんは小さな街でも自慢するんです。私はそれができなくて悔しいなと思って、その中で地元をもっと知ろうとする中で気付いたことでした。都会だとモノにあふれて気が散ることもあります。でも田舎だと時間をかけてでも共感を得ると、なかなか無くならないモノになるんです。勉強させてもらった青森でも、そんな勢いでやっていました」

 故郷でロコ・ソラーレが自慢の存在になることが重要だったのだ。

 今回の北京五輪でロコ・ソラーレは、1次リーグで負けたスイスに準決勝でリベンジした。一方、平昌のメダルマッチで勝った英国には、北京の決勝でリベンジされた。本橋に今後のビジョンを聞くとこんな答えが返ってきた。

 「チームの強化と育成はぶれずに続けていきたいのですが、カーリングは楽しいって皆さんに思ってもらえるような、私たちも楽しめるようなことを北海道だけではなく、全国の皆さんを巻き込んでできたらいいなと考えています。選手からの面白いアイデアはくみ上げて、すぐできるのか、ちょっとあたためるべきものなのかも含めて選手と相談し、いろいろな人の意見も聞きながら、『カーリングの世界に入りたいな』という仕掛けもしていきたいと思います」

 裾野の広げることで、地域や街が活気づくことを期待しているようだ。

北海道北見市にて2018年アイティメディア撮影

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