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「こんなはずじゃなかった……」 新入社員を悩ます“ガチャ”の正体早期離職の引き金に(5/5 ページ)

» 2022年05月30日 07時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]
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トラブル起こす「上司ガチャ」をどう防ぐ?

 一方、配属ガチャだけではなく、新入社員のもう1つの悩みは周囲との人間関係が悪化する“上司ガチャ”の問題だ。会社の中にはプレイヤーとしては優秀でも、コミュニケーション力が低く、指導力に欠ける上司もいれば、部下の意見にあまり耳を傾けることがなく、一方的にしゃべりまくり、ときには過去の栄光をひけらかす昭和的上司も残存する。そんな上司に嫌気がさして入社直後から転職サイトに登録する新人も少なくないといわれる。

画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

 それを防止するために最初の配属先の上司との相性をチェックする人事部も少なくない。広告会社の人事部長はこう語る。

 「例えば、親分肌で無理難題を言ってくるような上司の下にストレス耐性が弱い新人を入れると、すぐにやめてしまうリスクが高まる。そうしないために新人がどんなタイプなのか、何事も細かい性格なのか、ストレス耐性はどうなのかを適性検査をもとに分析する。その上で配属先の上司のタイプを見て、この人であれば新人との間でトラブルを起こす確率は少ないだろうと考えて配置をしている」

 上司にはいろんなタイプがいる。実は同社に限らず新入社員と上司のマッチングを行っている会社も多い。

 前出のサービス業の人事部長は「新卒採用数が30人程度の企業は間違いなく相性を考慮して配置しているのは間違いない。新入社員は社会的耐性がなく、上司と相性が悪いとメンタルダウンを引き起こしてしまいがち。最悪辞めてしまうリスクを回避するために大半の企業がやっているのではないか」と指摘する。

 このやり方だと上司ガチャは発生しにくいし、新入社員にとってはありがたい話だ。しかし、弊害もあると言う。同人事部長は「新入社員は仕事や人間関係などいろんなカベにぶつかり、それを克服して成長していくものだ。単純にリスク回避でやさしい上司の下に預けると、仲良しクラブみたいになり、本人の成長を阻害することにもなりかねない」と危惧する。

 もちろん、優しい上司ばかりではないし、新人全員をこうした上司の下に送り込むには限界がある。本人の成長と会社が期待する役割をどうマッチングさせていくのか、配属ガチャ問題と同様に上司ガチャ問題の解決は企業の切実な課題といえる。

 次回は“Z世代”である新入社員をどう育成していくのか。日本企業の育成の現状と課題について探っていきたい。

著者プロフィール

溝上憲文(みぞうえ のりふみ)

ジャーナリスト。1958年生まれ。明治大学政治経済学部卒業。月刊誌、週刊誌記者などを経て独立。新聞、雑誌などで経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。『非情の常時リストラ』で日本労働ペンクラブ賞受賞。


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