「SaaS×Fintech」で押さえるべき第2のポイントは「顧客単価の向上」だ。
これまでのSaaSのビジネスモデルは、ID提供によるサブスクリプションモデルであり、ユーザー数の伸びが成長ドライバーとなってきた。
一方で、SaaSビジネスは一定規模の拡大を見せた後、新規顧客獲得だけで成長率を維持することが難しく、追加機能の提供や他プロダクトのクロスセルを行うことでユーザー単価を上げることが長期的な成長には欠かせない。
Fintechはこの顧客単価の向上に大きく寄与することが期待されている。
米国の有力ベンチャーキャピタルアンドリーセン・ホロウィッツは自社が運営するメディアで、SaaSとFintechが融合することで1ユーザーあたりの単価(ARPU:Average Recurring Per User )が2〜5倍になると指摘している。
先日、ITmediaの記事でも紹介をした人材の労務管理プラットフォームを提供するディール(Deel)はまさにそのようなプレイヤーの筆頭格として挙げられる。
同社はグローバル人材採用に関する契約から給与支払いまでをワンストップで引き受けるプラットフォームを提供している。雇用にかかわる業務効率を圧倒的に向上させるとともに、被雇用者であるワーカーに向けた、クレジットカードの発行、仮想通貨での給与引き出し、給与前借といったFintech機能を提供する。
「プロダクトローンチ後20カ月でARR100ミリオンドル」といったSaaSプロダクトの成長スピードに加え、前回の資金調達ラウンド時の企業価値評価額55億ドル(約6247億円)といった破格の値付けにFintechビジネスへの期待が現れている。
Fintech分野へ投資を行ってきたベンチャーキャピタルWilでパートナーを務める久保田氏は「SaaSはFintechとの融合により、エクスポネンシャル(指数関数的)な成長カーブを生みだす可能性がある」と話す。
「例えば、米国のフィットネスクラブ向けSaaSを提供するマインドボディは、顧客の予約管理システムのみならず、会員に向けた物販の決済機能を提供している。会員が増え、ヨガマットなどの購買が増加するにつれ、トランザクションベースの収益が大幅に増えている」(久保田氏)など、グローバル展開するバーティカルSaaS企業などではFintechが成長のドライバーとなっているケースが出始めている。
SaaSの利用が成熟する日本においても、今後Fintechやマーケットプレイスを融合し、顧客単価の向上に取り組む企業が増えてくると見られる。
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