「SaaS×Fintech」最後のポイントは企業価値評価に与える影響だ。
これまでSaaSは一括の開発費用や買い切り型のモデルから、継続的な利用料を受けるサブスクリプションモデルへと変化を遂げてきた。
定常的な収益はARRやMRRと呼ばれ、この規模や成長スピードがSaaS企業の企業価値を考える上で重要となっていた。
一方で、Fintechなどのサービスが付加されるSaaSにおいては、決済の手数料などによってサブスクリプション収益以上の加速度をもった成長機会を得られる可能性がある。
「従来のSaaSはサブスクリプションモデルであるため、ユーザー数の伸びには基本的にはリニア(直線的)な軌道を描く。一方でFintechモデルは、トランザクションに対し一定利率がかかるため、顧客数に加え、顧客自身の取引成長が生まれればエクスポネンシャル(指数関数的な)な成長カーブを生む可能性がある」(久保田氏)
このように、これまでのARRマルチプル(時価総額/ARRの倍率)観点ではない企業価値評価がされ始めている。
また「今まではSaaS企業というだけで、同一比較をされてきたが、バックオフィス向けのSaaSと飲食店舗向けのSaaSは異なるビジネス。より一般的な企業価値算出に戻るのでは」(福島氏)といった指摘もなされた。
国内でもfreeeやマネーフォワードといった企業に、業界平均よりも高いARRマルチプルがつく背景には、将来的な「ARR以外の収益」が期待されていると見られる。
「SaaS×Fintech」は、企業の金融体験の変革、次なる成長ドライバーの創出、企業価値評価のあり方などの要素が絡まり、今後国内でも発展を遂げていくことが見込まれる。
プレイヤーはスタートアップに留まらない。これまでのFintechを担ってきた企業も本腰を入れて取り組みを始めている。
SBIグループ傘下のSBIビジネス・ソリューションズは、22年3月よりクラウド型請求書管理システム「請求QUICK」の初期費用、月額費用を無料で提供を始めている(記事参照)。
請求書発行の従量課金に加え、ファクタリングやクレジット決済機能を強化し「SaaS月額収益」以外でSBIグループ全体のリソースを組み合わせながらサービスの拡大を図っている。
厳しい資本市場環境下においてもSaaSは新たな価値を創出すべく、さまざまなプレイヤーがビジネスモデルを拡張しながら発展を続けていく。
LayerX 福島氏へのフルインタビューは企業データが使えるノート
『「SaaS×Fintech」トップランナーの景色とは? LayerX 福島良典 氏』
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