「日本の働き方10年での変化『社員クチコミ白書』」のなかに注目すべきデータがある。社員クチコミは「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」という働きがいを構成する8つの評価項目に沿って投稿される。この10年間の推移を分析したところ、7項目でスコアが上昇しているにもかかわらず、唯一「20代成長環境」だけが16年から下降していたのだ。
「20代成長環境」への不満とは、具体的にどのような問題なのか。OpenWorkに投稿された実際のクチコミの一部を紹介する。
「PCは遠隔監理され、全てログを取られています。午後7時30分に強制シャットダウン。仕事がやりきれない量を任されるのに、残業や休日出勤は毎月ランキングで発表され、組織として抑制されます」(施工管理、男性、不動産・建設)
「業務が細分化されているため、担当業務の幅は狭い。自身のキャリア形成について考えさせる風土になりつつあるものの、希望を出しても20代の社員はあまり異動できない」(事務、女性、自動車・自動車部品・輸送機器)
「社内でしか通用しないスキルが多い気がする。汎用的なスキルが身につくわけではないので、この会社に何十年もいた後に転職というのはあまり現実的ではない気がする。会社内での異動は一定の期間ごとに行われるものの、当然必ず希望通りになるわけではなく、なかなか自らが思い描いたキャリアを実現するのは難しいと思う」(企画、男性、電力・ガス・エネルギー)
「(退職検討理由への回答)若い頃から裁量を持って仕事に打ち込みたいと思ったため。大企業にいることによる成長スピードとベンチャー企業での成長スピードを比較した場合、圧倒的にベンチャー企業での成長とスピードの方が速いと感じる」(化学品、男性、総合商社)
誤解のないように伝えると、すべての若者が急成長できる外資系企業やベンチャー企業へ行くべきだとは思っていない。安定した環境で腰を据えて働くことやプライベートの充実など、人によって優先順位は異なるからだ。
一方で、長時間労働とは無縁で一見ホワイトな企業にも関わらず、20代の成長環境が得られない「ゆるブラック企業」では、自律的なキャリア構築が難しい。そのため、自身の優先順位と相談しつつも、成長できる環境を見極めるべきではないだろうか。
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