クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

中国格安EV「宏光MINI」は自動車業界のiPhone? 100万円以下のソックリEV続々登場浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(5/5 ページ)

» 2022年06月23日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]
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東風汽車の「風光MINI」は早くも失速

 宏光MINIを意識してリリースしたもの、月間販売台数が3ケタにとどまる車種もある。

 中国三大国営メーカーの一角で、日産自動車とも合弁企業を展開する東風汽車は今年3月、傘下ブランドから「風光 MINI EV」を発売した。価格は3万2600元(約61万円)からで、航続距離は120〜180キロ。細かい仕様は違うが、車種名といいデザインといい宏光MINIを連想しない人はいない。

 風光 MINIは1月から先行販売を始め、最初は売れ行き好調だったが、右肩下がりで数字を落とし、5月の販売台数は784台にとどまっている。宏光 MINIと似すぎているだけでなく、QQ 氷淇淋という選択肢もあり、消費者に訴求できていないようだ。

 ほかにも複数の大手メーカーが格安EVを発売している。宏光 MINIの大成功を見ても市場のポテンシャルの大きさは明らかで、参入しない選択肢はない。

 一方で、デザインや性能で消費者に差別化を示すのは非常に難しく、宏光MINIよりも安くて性能がいい商品を出せば、利益が取れない。

 スマートフォンを生み出したアップルのように、新しく創り出したマーケットだからこそ先行者有利もはっきりしているといえよう。

「宏光 MINI」と一文字違いの「風光 MINI」の販売は失速気味……(出典:ウェイボ

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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