投票用紙への採用を機に、徐々に知名度を上げた合成紙「ユポ」。近年は選挙業界だけにとどまらず、今では、さまざまな業界・用途で採用が進む。その代表例が商品ラベルへの採用だ。大手飲料メーカーが缶コーヒーのキャンペーン用ラベルに採用したことを契機に「綺麗にはがせる」「結露しても、水を吸い込まず破れにくい」と評判となり、採用する企業が増加した。
ラベルへの採用について、鹿野部長は「ラベル用のユポは、元々、原材料の配合率を間違えてできたものがきっかけ。いわゆる失敗作だった」とのエピソードを紹介した。偶然できた産物だが、現在では化粧品や洗剤など日用品のラベルとしても採用され、われわれの生活を支えている。他にも、風呂用のポスターや、船舶関係のマニュアルにもユポが採用されている。
さまざまな業界への採用歴を積み重ね、同社は20年3月の通期決算で売上高137億6600万円を記録した。鹿野部長は「商品はユポだけ。ユポしか売れるものがない」と自社事業について自虐的に語るものの、単一事業でここまでの売上高は驚異的といっていい。
近年は、プラスチック資源循環促進法などの施行で、店舗でのレジ袋が有料になるなど、国内外でプラスチックの使用量を削減する動きが出ている。こうした情勢を踏まえ、同社は、空気の含有量を増やすことでプラ使用量を減らしたユポを開発した他、再生紙のように、廃棄されたユポを回収し、再利用するといった循環システムの構築に着手し始めている。
「世の中が環境に配慮した製品を求めている。ユポのエコシステムを迅速に確立し、廃プラに貢献したい」(鹿野部長)
同社は新たな用途の発掘にも積極的に取り組んでいる。教育業界もそうした候補の1つだ。同社は「具体的な動きは現在ない」としつつも、「紙よりも2〜3割軽い」(同社)というユポの特性を生かし、例えば、学校教科書に採用すれば、教科書自体が軽くなる可能性がある。
教科書のページ数や副教材の増加を背景に、ランドセルが年々重くなり、腰痛や肩こりに悩む小学生(「ランドセル症候群」とも)向けに、「さんぽセル」という商品が4月に発売されるなど、小学生の負担軽減を図る動きに注目が集まっている。
同社はユポの価格について「紙の数倍」としており、教科書への採用となれば、コスト面が課題となりそうだが、実現すれば、小学生の“救世主”となるのは間違いない。タブレット端末を使った「デジタル教科書」とともに、教科書の素材にも今後、注目が集まりそうだ。
参院選の投票は7月10日午後8時まで。同社は「投票用紙には色々な技術が詰まっている。特に書き心地、パッと開くという特性を投票所で体験してもらうとともに、投票所に足を運び、投票率アップにも貢献してほしい」と有権者に呼び掛けた。
今後の事業については「紙との比較ではコスト面で劣るが、値下げだけが全てではない。今後も機能性を高めたユポを開発し、新しい業界・用途を開拓することで、社会に貢献していきたい」としている。
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