一方で、近年は別の課題が浮き彫りになっている。それは省エネ対応だ。「(分類機は)かなりの電力を消費する」と同社。一定の電圧でなければ正常に作動しないため、一部では外付けの電圧機を使用している自治体もあるという。
特に今夏はエネルギー需給が逼迫(ひっぱく)し、政府は企業や国民に節電を呼び掛けている。同社は「省エネ対応が求められていることは認識している。今後の開発で取り組んでいきたい」としている。
世界的な半導体不足の影響も受けている。分類機など同社製の選挙機器にも半導体が使われているからだ。参院選は3年ごとの改選のため、必要数を前倒しして確保することで対応できたため、影響が軽微だった。だが、同様の状況が続けば「納品が遅れるなどの影響が出る可能性がある」として同社は危機感を示す。
12年前の2世代目の発売以降、技術も進歩している。「現在、検討中」(同社)という3代目の分類機には、最新技術の採用とともに、国内外の情勢を踏まえた開発が求められそうだ。
同社は分類機同様、交付機と計数機でも業界シェア8割前後を誇る。特に投票用紙の交付機の、異なる種類の用紙を誤って交付する「取違え交付」を未然に防止する機能が好評だ。独自開発のカラーセンサーを搭載し、投票用紙の色を数値化。異なる色の投票用紙が混じっていれば交付を停止するという仕組みだという。
他にも、投票箱など選挙に関わる多くの製品を手掛けているムサシ。21年は衆院選と東京都議会議員選挙が重なったこともあり、22年3月期の通期決算で、選挙事業としては過去最高の売上高61億円を記録した。全体の売上高(約300億円)の2割ほどを占め、同社の業績を支えている。
同社は今後の事業展開について「電子投票が検討されるなど選挙制度が変わる可能性がある。将来的に投票用紙を使った選挙だけではなくなることも視野に入れ、さまざまな選挙制度に関する情報を収集しながら対応していきたい」と意気込んだ。
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