ここからは、小売りカテゴリーのトップ2である「無印良品」「ワークマン」を考察していく。まず、無印良品のコスパに付随する体験価値は「シンプル」だと言える。
特筆すべきは、「専門店」「日用品販売」「服飾雑貨・靴・鞄・アクセサリー・宝飾」の3つの業種で最高の顧客体験価値スコアを獲得している点だ。
商品デザインだけでなく機能性や接客に至るまで無駄を省いた、「シンプル」という体験価値を複数の業種にまたがって提供している。ドン・キホーテやセリアなどの先述したブランドとの違いもここにある。
最後はワークマンだ。男性の作業着ブランドから躍進したきっかけは、扱うアイテムをスタイリッシュなワークウェアに絞り、売り方や見せ方を変えた「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」という新ブランド店舗を立ち上げたことが大きい。顧客もコスパ以上の「プロが認める高い機能性」という同社が押し出したい体験価値を実感していることが自由回答からうかがえる。
無印良品とワークマンを語る際に欠かせないキーワードは「広がり」だ。これまでブランドは「ブランドが出したい商品を顧客が受容するか」という観点で商品を開発してきた。商品開発において、顧客の声をアクションに生かす動きは、顧客起点・顧客中心主義に類すると言える。ただし、今後ブランドをより拡大させていくためには「顧客が欲しい商品をブランドが許容するか?」という観点も不可欠だと考える。
ワークマンは当時、自社のことを「仕事着ブランド」だと認識していた。しかし、実際の顧客の使用状況を調べたところ、アウトドアやスポーツのシーンで使用されていることが判明した。これがワークマンプラスのきっかけだという。まさに企業が意図しない用途で顧客自身がブランドの役割を広げた好事例と言える。
無印良品に置き換えれば、業種を超えて顧客が求める「シンプル」という体験価値をブランドが許容し、取り込んできた結果が今の姿ということになる。
本稿の冒頭で述べたドン・キホーテ、セリア、ダイソーの「レジャー感」「かわいい」「アイデア」という体験価値自体も広がりのポテンシャルを持つ。ブランドの体験価値を違う用途や業種に広げられないかを考えてみることが、ブランドの価値向上につながっていく。
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