オフィスについて横江氏が注文したことは2つある。1つ目は「見える、聞こえる、話せるオフィスにする」。各部門の社員が交流しやすいように、仕切りがなく、目線がちゃんと合うようなオフィスにすることだ。「みんなの話していることが聞こえる環境で、いちいち報告を受けなくてもいいような状況にしていきたい」という狙いがあった。
もう1つが「東京2020オリンピック・パラリンピックに備えて、その時期に本社を閉じる前提で仕事ができるようにする」というもの。見える、聞こえる、話せるオフィスにしながらテレワークもできるようにするという、相反する要求だったが、そこは多くのSEを抱える同社なので、ネットワークなどを準備し、テレワークができる環境が整った。その後、新型コロナウイルス感染症が拡大する。注文し、準備していたことが役立った。
とはいえ、テレワークについては、業種によって「できるわけがない」という反対意見も挙がったそうだ。顧客からの発注書や契約書のやりとり、問い合わせの電話に対応できなくなることなどが問題とされた。
「そこで諦めないのが僕で(笑)、どうやって仕事をしているかを見せてもらいました。そしてヒントを与えて、みんなでもう1回考えてくれと。どうしたらできるかを考えてほしいと、その時はちょっと押しつけ気味に言いました」
その結果、すでに作っていたシステムを一部変更することで、申込書や契約書の電子化を実現。電話はPBXが導入されていたので、社員には社用の携帯電話を配布して転送電話で対応できるようにした。テレワークができるようになると、子どもを持つ社員から歓迎の声が挙がり、他の部署もテレワークに前向きになった。
「隣の部署が『できた』と言ってるのに、自分たちがいつまでも『できない』とは言っていられない。見えて聞こえる、このオープンな環境の効果ですよね」
契約の電子手続きは、申し込み者側だけに費用がかかるクラウドサービスを探した。契約書を電子化すると、郵送の手間や費用に加え収入印紙が不要になり、大幅なコスト削減効果がある。顧客に電子化することを説明すると、「そのサービス、もう使っていますよ」という会社も数社あったという。
稟議など社内業務手続きや社員の給与明細などもクラウドサービスに移行。もちろん、源泉徴収票の電子化も行い、現在は「紙はほとんどというか、全くないと言っていいかもしれない」状態になった。
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