大企業が硬直化した組織や事業形態に楔(くさび)を打とうと、オープンイノベーションの場に積極的に出ていったり、自社内で新規事業を募るイベントを開催したりすることは珍しくない。
ただ、実際に企業全体、あるいは業界全体に影響を与えるような強いインパクトを残すだけの成果を挙げる例は“まれ”と言えるだろう。イノベーションに取り組んでいる関係者の能力や努力が不足しているのではなく、構造的な問題が背景に横たわっている場合が多いからだ。
そんな中、パナソニックがシリコンバレーの日系ベンチャーキャピタルと共同で立ち上げたBeeEdge(ビーエッジ)は、大企業による同種の取り組みにはなかった成果を挙げているようだ。
BeeEdgeはパナソニック社内で起業を考える社員に対し、ハードウェアスタートアップとしての独立支援を行う取り組み。取り組みから3年半以上を経て、独立した事業が成長しているだけでなく、パナソニック本体にもプラスの影響が出始めているという。
パナソニックが日系ベンチャーキャピタルのScrum Ventures(スクラムベンチャーズ)と共に立ち上げたBeeEdgeのトップは、DeNA創業期を支え、DeNA会長およびDeNA球団の初代オーナーを務めた春田真氏だ。
筆者は3年半前、BeeEdge設立時にも春田氏に話を伺っているが、当時、ユニークだと感じたのは、よくある社内ベンチャー募集とは異なり、真に精神を持って新しい事業を興す起業家の支援に絞っていたことだ。
支援を受ける社員はパナソニックから籍がなくなり、新たに登記する新事業会社のトップとしてパナソニック、Scrum Venturesおよび、それ以外のベンチャーキャピタルからの支援を受けながら事業立ち上げに集中する。
つまりパナソニックという大企業とつながる「紐」である雇用関係を切った上での独立支援ということだ。
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