そもそもBeeEdgeを通じて独立するベンチャーは、パナソニックの中では事業として成立させる規模に育てることが難しいアイデアだからこそ、社外での事業化を目指すものだ。
新しい市場を創出するためにはリスクもあり、また時間もかかる。事業として成立していないものを、どのように成果として評価するのか? という問題もある。
だからこそ、そこにベンチャーが生まれる要素があるわけだ。
「米国であれば、自分自身で事業計画を立て、資金調達をしてと社外で起業するのが普通です。しかし日本の電機メーカーではずっと社内に囲われた形になりがちで、起業のやり方も分からず、アイデアを挙げても、そこに大企業が取り組む事業価値がなければ会社から認められず、そのままアイデアの芽が死んでしまうんです」(春田氏)
では日本の大企業に勤める社員たちに能力がないのかといえば、実は優秀な人たちがそろっている。結局は「気持ちの持ち方が違うだけ」というのが、日米でのベンチャー投資案件に精通する春田氏の考えだが、こうした考え方はパナソニック側が積極的にBeeEdgeの活動を支援することで、社内にも浸透している。
かつてパナソニックでGCCの立ち上げを行い、BeeEdgeを共同で立ち上げた深田昌則氏は「『こんな事業をしたい』とアイデアを持つ人は多い。しかし独立した事業として成立するアイデアばかりではなく、また社内で再検討すべきアイデアなどもある。ではどうすれば独立できるのか。春田氏がベンチャー投資、インキュベーターの立場から、アイデアを持ち込む社員やセミナーを通じて起業につなげるための意識を社内に広げました」と話した。
現在はパナソニックを退社、インキュベーターで新規事業立ち上げを支援している深田氏。大企業の中で漠然と事業アイデアだけに考えをめぐらせていた社員たちが、実際にプロダクトを市場に投入し、事業として成立させるためのビジネスモデル全体に考えを巡らせるようになった意識変化は大きかったと振り返る。
すなわち、実際にBeeEdgeを通じて起業したベンチャー以外の部分である「パナソニック自身の意識改革」が成果としてはより大きいと感じているという。
BeeEdge自身もこの3年半で変化した。同社に産業革新投資機構傘下のINCJが資本参加し、事業化までの期間が長いハードウェアスタートアップに対し息の長い支援が行える体制が整った。
そんな中で生まれた一つの事例は、将来の独立を考えている優秀な若手起業家をパナソニックにひきつけるきっかけになると春田氏は期待している。
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