ブランスクム 吉川さんには失敗という概念はないんですか?
吉川 全くないですね。どんなにうまくいってなかろうが全然気にしない。なぜかというと、最初から自分たちのやっていることはすごいという前提に立たないから。最初から、ダメなもの、こんなのがうまくいくはずがないという前提で、周囲の共感を得ながらやると、失敗は起きないですよ。
古田 みんな失敗や成功という言葉に引っ張られすぎ。
ブランスクム 引っ張られますよね。だから越境しにくいんだと思います。
山本 失敗は全部糧だって言い切れますもんね。
吉川 そうそう。多大なる実験をやっているわけで。うちの会社でも、新しい事業をどんどんやるんですけど、それで成功する人はあまり評価しないんです。それは間違いなく、他の多大なる失敗が糧になって生まれたものだから。
それに、うまくいったものを評価し始めると、失敗する人がいなくなるでしょう。そうすると、多分似たものしか出てこなくなる。だから、失敗の方が価値を生み出していて、それをうまくすくい上げて成功した人は、次にもっと大きな失敗をしないといけないんですよ。
ブランスクム いかに成功を効率的に横展開していくか、みたいなところにすごく囚われている感じはありますよね。
吉川 でもそれは、結局長い目で見ると逆効果だと思うんですよ。単一化するから、ダメになるときには全部だめになっちゃう。失敗にこそ学びのポイントがある。
山本 道の駅をつくる時に、ダメな道の駅を120カ所回ったんですよ。で、どの辺がダメだったのか、何があったら良かったのか、みたいなことを全部ヒアリングして。それを全部言語化すると、結構共通項が見つかるものなんです。そうやって落とし穴を埋めることによって、リスクを回避できる。
古田 そういう意味では、失敗をどうデザインするかが重要なポイントになる。まさに「失敗を肥やしにする」ことが大事。
吉川 企業の中でも、うまくいかなかったことはタブーになっちゃうじゃないですか。うまくいかなかったことに向き合うのって嫌なことなんですけど、それをドキュメントすべきだし、失敗を受け入れる寛容さがすごく大事。
実際、成功している人は失敗の方が多くて、その膨大な失敗が多分糧になっている。だから、お互いの失敗をシェアした方が仲良くなるし、得られるものも大きいし、面白い。
古田 完璧じゃないと「関わりしろ」があるけど、全部できあがっていると「関わりしろ」がないよね。
吉川 それはありますね。こういう場所(SAAI)も、内装が完璧にできていない方がいいじゃないですか。この椅子だって座りづらくて絶対仕事に向いてない(笑)。でもそれでいいんですよ。ここが効率的に働けるオフィスだったら、普通のオフィスと変わらなくなっちゃう。
ここには無駄なものがいっぱいある。「バー変態」(SAAI内に設置されたBARスペース)なんか無駄の極致で、やっちゃいけないことをやっちゃってるじゃないですか。でも、それが多分価値になっているわけですよね。
古田 だから、効率的にしないことが一番重要なのかなと思います。
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