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インフレ手当は一度だけなら、社会保険料がかからない──本当なのか?社労士・井口克己の労務Q&A(1/3 ページ)

» 2022年10月11日 10時00分 公開
[井口克己ITmedia]

連載:社労士・井口克己の労務Q&A

労働法に詳しい株式会社Works Human Intelligenceの社労士・井口克己氏が、人事労務担当の素朴な疑問を解決します。

Q: ここ1年間で物価が高騰しており、社員の家計にも影響が出ているようです。これを受けて当社では、社員の生活支援のためにインフレ手当を支払う準備をしています。

 準備をする中で、「臨時的かつ一度だけであれば、所得税の対象になるが、社会保険料はかからない」と聞きました。具体的には、どのようにすればよいのでしょうか。

photo 画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

A: 一時金を「臨時的なもの」として社会保険料の算定基礎に含めない扱いは、「きわめて狭義に解するもの」とされています。物価高騰による生活費の補填を目的とする手当は、一時金として支払った場合でも、賞与扱いとなり社会保険料の算定基礎に含める必要があります。

つまり、どういうこと? 社労士が解説

 「インフレ手当を一時金で支給すると社会保険料の算定基礎に含めないくてもよい」という見方は、日本年金機構のWebサイト内に「『臨時的に受けるもの』ついては、報酬などの範囲に含まない」旨が記載されているためと考えられます。

 このことについて「インフレ手当とは何か」また「社会保険料の対象となる報酬などの範囲」について確認した上で、インフレ手当の一時金が「臨時的に受けるもの」に当てはまるかについて説明します。

インフレ手当とは

 インフレ手当とは、物価手当、生活応援支援手当とも呼ばれ、社員の生活費を補助することを目的とした手当です。月々の手当または一時金で支給します。昨今の物価高騰を受けて、導入する企業が増えているようです。

社会保険料の算定基礎に含める報酬とは

 社会保険料の算定基礎に含める報酬を、法は次のように定めています。

「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものはこの限りではない。(健康保険法第3条第5項)

「賞与」とは、賃金、給料、 俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。(健康保険法第3条第6項)

 厚生年金保険法においても、同様の定義がなされています。(厚生年金保険法第3条3項、4項)

 この説明では抽象的で分かりづらいと思われます。具体的な事例が日本年金機構のWebサイトで「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」として公表されています。その内容をもとに会社から社員が受ける報酬について支給の種類と頻度によって算定基礎に含めるか否かをまとめました。

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