クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

クルマの「燃料」はどうすればいいのか 脱炭素の未来池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2022年10月31日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

全部をBEVにするのは無理

 ここで注意してほしいのは、「だからBEVは無意味だ」と言っているのではない。あくまでも「全部をBEVにするのは無理だ」と言っているに過ぎない。材料が足りないのだからつくれる量に限度がある、という極めて当たり前の話でしかない。いい加減「賛成派VS. 反対派」という対立をあおる構造は止めるべきである。

 ここに1枚の図を用意した。というより筆者が2年前につくり各所で使っている図である。

 この問題に関しての派閥は論理的には4種類考えられるのだが、(1)の「内燃機関即刻打ち切り派」、(4)の「BEVを開発する必要はない派」は、おそらく実態としてほとんど存在しない。つまり、「BEV賛成派」と「反対派」というのは、実質的には(2)のガソリン車「打ち切り時期確定派」と、(3)の「BEV以外も継続開発すべき派」の対立でしかないのだ。

 全部をBEVにするのが無理だとしたら、足りないぶんを何で補うのか。ひとまずBEVを基準で考えても良いだろう。例えばこの先5年はどうするのか? いますぐ化石燃料の販売を禁止できるわけではないし、仮にできたとしてもBEVが買えない人はどうしたらいいのだ。仮に世の中の全ての人がBEVに1000万円の補助金をもらえ、経済的負荷がゼロだったとしても、前述した通りそもそもクルマがつくれない。

 夢物語を語っていても仕方がない、BEVを売れるだけ売ったとして、それが仮に現状の10%未満から、5年以内に3倍超えの30%まで爆増したとしても、残る70%は取り残される。足りない台数7000万台の最適解はおそらくハイブリッド(HEV)だろう。BEVに次いで、走行中のCO2を最小化できる次善の策である。だから今でもHEVは大事なのである。

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