ロックフェラー家の当主で、ロックフェラー・キャピタルマネジメント取締役のDavid Rockefeller, Jr.(デビッド・ロックフェラー・ジュニア)さんが2004年に設立したNGO団体「セイラーズ フォーザシー(SFS)」。海洋保護を目的としたSFSの日本支局を率いるのが井植美奈子理事長兼CEOだ。
SFSの活動の柱は、企業や自治体を通した「ブルーシーフード」の普及だ。ブルーシーフードとはサステナブルな魚介類、つまり(1)資源量が比較的豊富な魚種で、(2)生態系を守りつつ、(3)管理体制の整った漁業による魚種を指定し、「積極的に食べよう」と推奨する魚のことを指す。
漁業の資源管理を取り巻く状況は厳しさを増している。最近では12月10日に、国際自然保護連合(IUCN)が、クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビのアワビ3種を絶滅危惧種(レッドリスト)に選定した。その要因として、乱獲や密漁、気候変動による生息環境の悪化を挙げている。
今後、野生動植物の国際取引を規制する「ワシントン条約」で議論する際、この結果が科学的な根拠となり、取引が制限される可能性も否定できない。そうなればビジネスの世界にも大きな影響を与え得るのだ。
こうした状況をSFSはブルーシーフードによってポジティブに改善しようとしている。SFSは全国版のブルーシーフードガイドに加えて、三重県に続き、今年7月には東京都と包括協定を締結。都は「ブルーシーフードガイド東京都版」を発行した。都との協働により、水産庁が発行した資料だけでは見えてこない地域のデータを活用した、きめ細かな評価を可能としている。
さらにSFSは、このブルーシーフードを事業の中で推奨していく企業や自治体を「ブルーシーフードパートナー」として認定し、資源への好影響を広めようとしているのだ。
インタビューの前編【ロックフェラー家当主が設立した「海を守る組織」 日本支局トップに聞く“違法・無報告・無規制の漁業”】では、70年間大きくは変わらなかった漁業法が改正に至った経緯を聞いた。
後編では井植理事長兼CEOに、ブルーシーフードの可能性と企業との関わりを聞く。
――海洋環境を持続可能な食の観点から改善する理念に賛同する「ブルーシーフードパートナー」の加盟企業数は年々増えていますね。
いま加盟企業数は65で、店舗まで数えると100を超えています。飲食店ではブルーシーフードガイドに掲載されているサステナブルなシーフードを優先的に調達することを推奨しています。
――さらに企業の数を増やしていくことが今後の目標ですか?
そうですね。増やしていくと同時に、これからの課題としては、パートナーシップという意味合いを強化していくことだと考えています。いまパートナーシップは、1社当たり年間会費を1万円に設定していて、入会時に審査しています。
これは基本的に反社会的勢力でなければ入れるものです。ただ、どのくらいの真剣度でコミットしてくださっているかも社会に向けて表現していくようなシステム作りを、強化したいと思っています。
――年1万円というのは安価ですね。
これは創業後の13年に、何とか活動を広めたい思いで始めたものです。「これで収益をあげたい」という構造ではありません。中小の企業でも入れる値段で、大企業には自覚を持ってもらえるための金額に設定しました。決算の時など年度ごとに認識をしていただきたい狙いでお願いしています。
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