マーケティング・シンカ論

年間4万件の「声」は、味の素「Cook Do」をどう変えたのか会話内容を全て読み込む(2/5 ページ)

» 2022年12月26日 08時00分 公開
[大村果歩ITmedia]

“声”を全て読み込む「企画・情報統括グループ」

 企画・情報統括グループは、商品の開発・改善につなげるための業務を行っている。

 「お客様の声をその日のうち、もしくは翌日中に全て読み込んでいます。リスク管理の役割も担っているので、異物混入など健康危害につながるようなものは、すぐにアラートとして管理部門に働きかけをしています」(企画・情報統括グループ 小宮山亜実さん)

コールセンター 過去に消費者の意見から改良した事例(公式Webサイトより)

 商品に対する不満やアイデアは逐一社員がピックアップし、月に1回実施している「お客様の声活用会議」で対応について話し合う。小宮山さんは「3社の視点やノウハウを共有しながら、関係部門にどうやって改善案を提案するかまとめています」と話す。

 「『使いにくい』などの意見を受けて、『どうしてそうなってしまったのか』という原因をお客様の声から読み解き、突き止めていきます。

 オペレーターに会話を全部記録してもらっているのは、意見の背景を探るため。会話を通じて、『どうしてそう思うんですか?』『どういった使い方をしたのですか?』と質問するなど、背景や原因を聞き出すように意識しています。ロジカルに事業部に提案するためには、トラブルやご不満の『背景』がとても大切です。

 どんなに優れた商品を開発しても、時代とともにお客様のニーズや期待は変化します。せっかくいただいたお声なのですから、最大限活用して常にお客様が満足する商品を生み出し、持続的に支持される企業でありたいと考えています」(企画・情報統括グループ 小宮山さん)

コールセンター 過去に消費者の意見から改良した事例(公式Webサイトより)

電話での会話が重要

 こういった不満・トラブルの背景を探るためには、「会話力」が非常に重要となる。オペレーターは電話を受けた時点で、質問や意見の背景を究明できるように、会話の流れをコントロールする必要があるのだ。

 「電話の対応については、トークスクリプトやFAQを用意しています。しかし、全てを事前予測できるわけではありません。オペレーターからも、『聞かれたことに答えることはできるが、そこから会話につなげるのは難しい』という意見が聞かれており、通年で研修を実施しています。

 研修では、会話の中でお客様とうまく関係構築をできるようにトレーニングを積んでいます。会話のつなげ方、意見やご不満の背景を探るための話し方など、いろいろなコツをレクチャーしています。

 お客様が発する言葉の中には、注意してほしいポイントがあります。例えば、同じことを繰り返している場合は、お客様が私たちに伝えたい内容で、十分納得いただけていないというサイン。会話の中でのヒントを理解してもらって、お客様に気持ちよく話してもらうための練習もしています」(応対統括グループ 中曽根さん)

コールセンター 「会話力」が非常に重要(ゲッティイメージズ)

 「1問1答で対応するお客様相談センターも多いですが、弊社はお客様の話を傾聴して、プラスアルファの情報を伝えるなど、寄り添った応対を心掛けています。1対1の質疑応答では味気ないじゃないですか。それだったらチャットボットでいいのです。人間がやるからには、気持ちよく話をしてもらいたいと考えています」(松村安津子センター長)

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