野村総研がテレビ業界の縮小を予測する背景には、番組コンテンツのネット配信サービスの存在がある。在京キー局を中心とした民放各社が主導する「TVer」は、無料見逃し配信に加え、22年4月から一部の番組を対象に地上波放送との同時配信を開始した。
ユーザー認知も進んでおり、NTTドコモ モバイル社会研究所が22年12月に発表した調査によると、19年には46.4%だったTVerの認知率が、22年には72%に達した。利用率も同様に19年の8.2%から16.4%まで倍増。「ABEMA」の利用率(8.7%)を上回っている。
民放発のサービスとしてTVerのライバルとなる「Paravi」(TBS、テレビ東京、WOWOW)も3局の番組や、独占配信コンテンツが好評だ。例えば、テレビ東京は地上波では放送できない内容を、ネット配信のメリットを生かし、限定コンテンツとして制作。自社の人気番組「やりすぎ都市伝説」のParavi特別編「R-地上波 都市伝説」を配信したところ、新規会員が3000人増加したと番組内で明らかにした。
テレビからネットへのシフトを示す出来事として、野村総研はインターネットテレビ局「ABEMA」による、サッカーワールドカップ(W杯)の全試合配信にも言及した。サイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資するABEMAは全64試合を配信。日本代表のスペイン戦やクロアチア戦、決勝戦はいずれも視聴数が2000万人を突破し、一部の試合でサーバへの負担を軽減するため、アクセス制限を行うほどの盛況ぶりだった。
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こうした状況から野村総研は「ネットでテレビを見ることに大きな成功体験をもたらした。将来的にはメディアコンテンツビジネスの主戦場はテレビ放送から配信サービスに移る。特に、テレビ発の強いコンテンツを集めたポータルサイトの活況がしばらく続く」と見込んでいる。同社担当者はレポート内容について「テレビ局が消滅するということではなく、番組発信のスタイルや収益構造が変わるということだ」との見解を示している。
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