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急増するインバウンドに商機 100社以上に導入された「多言語対応AI」サービスとは?生成AIスタートアップの挑戦

» 2023年11月01日 11時40分 公開
[今野大一ITmedia]

連載:生成AIスタートアップの挑戦

ChatGPTをはじめとする生成AIに注目が集まる中、多くのスタートアップ企業が生成AIビジネスに参入している。新興企業は新たな技術を武器に、既存のビジネスをどう変革していくのか――。

これまでの掲載

今後の掲載予定

(本記事)、オルツ

※順不同、今後も追加予定

 連載「生成AIスタートアップの挑戦」第8回は、多言語DX事業やAIチャットボット事業を手掛けるObotAI(東京都港区)を取り上げる。

 同社は多言語対応のAIチャットボット「ObotAI」のほか、ChatGPTを活用した自社サービス及び受託開発などを手掛けている。

 コロナ禍が明け、インバウンド市場が再び拡大していくことが予想される中、どんな勝算を描いているのか。ObotAIの北見好拡社長に聞いた。

社名 サービス概要 顧客が受ける恩恵 サービスの強み リスク対処 ビジネスチャンス
エクサウィザーズ 株主総会の想定問答作成を支援 IR業務を効率化 大企業のニーズを把握、エンジニアも多い 生成AIの処理は国内で実施 コスト削減の余地が大きい業務に拡大できる
Spiral.AI 個性を有した会話が可能なAIコミュニケーションツールを開発 対話していて楽しいコミュニケーション体験 AIに個性を付与する各種技術ノウハウ ISMSなどの国際・業界基準に沿った情報管理 ユーザーフレンドリーなUI/UXに仕立てていくかが非常に肝要
リーガルスケープ 法令検索などのプラットフォームを提供 気になる法的論点などを1分足らずで提供 自然言語処理技術・生成AIをいち早く法務調査に応用 生成AIに詳しい弁護士複数名から助言 法情報をデジタル化し価値を最大化すること
ABEJA 独自AIプラットフォームで企業にDX支援 ゼロPoC(実証実験)で運用が可能 検討から運用までのスピードの速さ AIに関する課題を討議する外部有識者委員会を設置 LLMが企業DXの起爆剤に
AI inside マルチモーダルAIを簡単に作り・使い・共有できるプラットフォーム 文書、画像、音声などあらゆるデータを活用した高度なDXの実現 マルチモーダルなインプット/アウトプット実現 国内サーバーで専用のプライベート環境を構築 自律型AIを研究開発し「AIの民主化」へ
リーガルアイ AI法律相談サービスを提供 「最初に疑問に即座に答える」ニーズに応える 未知の法的問題への対応を予測する能力も持つ 個人情報を収集せず著作権に関わるものは生成していない 弁護士外にも無数のAI(人間の分身)を創造
Cynthialy ChatGPT・生成AIリスキリング研修を提供 業務効率化の例)オウンドメディア運営で取材の翌日に記事完成 生成AIを組織内で実践的に活用できる人材を育成 リスクを防ぐために必要な環境構築のための学習プログラム・環境導入を支援 人手不足の問題にも対処できる可能性
ObotAI 生成AIを活用した多言語対応のサービス ユーザーのニーズに合わせたカスタマイズが可能 海外スタッフが育成する、信頼の多言語AI リスクを感じていることは、今のところない 多言語コンテンツ制作サービスに期待
各社の回答(要約)

Q. 生成AIを活用したどんなサービスを展開しているのか

 弊社は、宿泊施設、インバウンド事業者、地方自治体などに対し、生成AIを活用した多言語対応のサービスを提供しています。具体的には以下の3つのサービスを展開しています。

(1)ChatGPTと連携した多言語AIチャットボット:「ObotSERVE」

(2)iPadやサイネージで利用可能な音声入力AIツール:「インバウンドアシスト」

(2)Web会議のテキスト化と自動翻訳ツール:「Minutz」

 導入実績としては、多言語向けソリューションとして、サービス開始以来100社以上に導入されています(ChatGPTと連携した多言語サービスはそのうち10社)。

 インバウンド市場のピークは2019年でしたが、25年にはこれを超えると予測されています。言語、文化の違いによる外国人旅行客とのコミュニケーション課題は、今後さらに増えると予想され、AIを活用した言語解決ソリューションの需要は、今後も増えていくと考えられます。

 弊社は引き続き、生成AI技術を研究・利用して、海外旅行者に地元の文化や地域情報を提供し、外国人旅行客の滞在体験を向上させ、インバウンド市場の成長に貢献していきたいと思います。

ObotAIの北見好拡社長

Q. 顧客はどんな恩恵を受けられるのか

 弊社のAIサービスは、ユーザーのニーズに合わせたカスタマイズが可能です。例えば観光客に対しては、スムーズな情報提供による満足度の向上や消費の促進などの効果が期待できます。

 将来的には、利用データを分析することによって、ユーザーの潜在的なニーズを明らかにすることも目指しています。具体的には以下のデータを可視化し、分析することが可能です。

  • いつ? 
  • どこで?
  • どの国籍の人が?
  • 何を質問したのか?
  • 生成AIはどのように提案したのか?
  • 質問者の性別は?
  • 質問者の年代は?
  • このエリアにどのような課題やニーズがあるのか?

Q. 自社のサービスの強みは

 弊社の強みは「海外スタッフが育成する、信頼の多言語AI」を提供できることです。

 ChatGPTの登場により、複雑な質問への回答が容易になりました。人が対応しているような会話体験を提供できるのが生成AIの強みです。ただ、まだまだ精度が100%ではないのも事実です。

 特に多言語に関しては、自動翻訳だけでは正しい回答を引き出すことは難しい状況です。そこで弊社は生成AIの基本データの作り込みを、その国の文化や習慣を理解している経験値の高いスタッフが担っています(日本、米国、台湾、中国、タイ、ベトナム)。

ObotAIのスタッフ

Q. 著作権侵害や個人情報保護など生成AIがもたらすリスクへの対処は

 個人的な意見となりますが、まだ明確な法律がない中でリスクを感じていることは、今のところないと考えています。

Q. 生成AIに今後どんなビジネスチャンスがあると考えるか

 例えば、多言語コンテンツ制作サービスにはビジネスチャンスがあると考えています。

 これは生成AIが自動でテキストや画像、動画などのコンテンツを生成してくれるサービスです。多言語のWebサイトや観光パンフレット、海外向けのマーケティング動画などを制作するのに活用できます。ただし、正しいテキスト、音声、動画なのかを精査する必要性があります。

 生成AIはユーザーの好みや履歴に応じてリアルタイムでカスタマイズされたコンテンツを提供する能力を持ち、これによりターゲットとなる顧客に合わせたマーケティングや広告戦略を展開できます。

 つまり大量のデータを高速で分析し、それに基づいて戦略的な提案や予測を行うことで、市場の新しいニーズに迅速に対応したサービスやプロダクトのアイデアを生み出せるのです。これらの能力を駆使することによって、企業は市場の変化に柔軟に対応し、競争力を高められると考えています。

ObotAIのオフィス

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