東京大学大学院工学系研究科修了、米国シカゴ大学経営大学院修士課程修了。
野村総合研究所、A.T.カーニー社で経営コンサルティング業務に従事。
目下、グロービス経営大学院で教員としてテクノベートシンキング、ビジネスアナリティクス、ビジネスデータサイエンスをはじめとする思考系、テクノベート系科目の科目開発、授業を担当するほか、グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)の所長としてAIを使った次世代の経営教育を創るべく研究開発に時間とエネルギーを注いでいる。
前編でChatGPTに代表される2023年の生成AI関連の動向を振り返り、中編でChatGPTを取り巻く24年のトレンドと今後のビジネスへの影響について解説しました。
後編では、ChatGPTなど生成AIを活用するために、人間にはどのような能力が必要とされるのかを考えてみたいと思います。AI時代を生き抜くために私たちが身に付けるべきスキルは、一体どういったものがあるのでしょうか?
ChatGPTへの指示や質問などの入力はプロンプトと呼ばれています。使ったことがある方は体感していると思いますが、ChatGPTの反応はプロンプトの表現に大きく依存します。
最近ではプロンプトエンジニアリングという言葉を聞く機会が増えました。これはまさに、どのような表現でプロンプトを書けば、ChatGPTが期待するような答えを返してくるかを考えることです。
例えば、本家のOpenAIではプロンプトエンジニアリングとして次のようなことが推奨されています。
(1)指示(例えば、“要約して”)を最初に書き、指示の対象(例えば、要約する文章)は###や”””などで分けること
(2)できるだけ欲しい文脈、結果、フォーマット、スタイルについて具体的かつ詳細に書くこと
(3)欲しいアウトプットのフォーマットを例示すること
(4)欲しい結果について例示してあげること
(5)あいまいで不正確な記述を減らすこと
(6)“してはいけないこと”ではなく、“すること”を伝えること
(出典:Best practices for prompt engineering with OpenAI APIより執筆者が抜粋、追記)
以下は例示ですが、ChatGPTに俳句を作ってもらいました(多少、字余りになっていることは大目に見てあげてください)。
プロンプトの指示を具体化、すなわち条件を明確にしてあげることで、ChatGPTの反応が変化していることが分かっていただけると思います。
ChatGPTを使っていると「もしかすると人間も、歩く言語モデルかもしれない」と感じることがよくあります(言語モデルは、学習した大量の言語データから、次の単語を予測するもの)。「実は人間も文を作ってからしゃべっているのではなく、次から次へと単語を並べているだけではないか」と思えてしまうのです。
具体的なプロンプトの表現テクニックはインターネット上にあふれていますが、結局、ChatGPTだからと難しく考えるのではなく、人とコミュニケーションをとるのと同じように考えればいいのかもしれません。前述のOpenAI推奨のプロンプトエンジニアリングも、「あいまいで不正確な記述を減らす」といったように、「それって人間相手にも大事だよね」ということばかりです。
このようにChatGPTをはじめとする生成AIを効果的に活用するためには、的確なプロンプトを書くことが不可欠です。結局、何を生成AIにインプットするかによってアウトプットの質が決まってくるのです。
それでは、ChatGPTに良いプロンプトを投げかけるためには、人にはどのような力が必要なのでしょうか?
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