マーケティング・シンカ論

なぜみずほは“悩みを吐き出せる”謎の「電話ボックス」を置いたのか?「おもしろ広告」大解剖(1/2 ページ)

» 2024年03月02日 08時00分 公開
[大村果歩ITmedia]

「おもしろ広告」大解剖

今話題を集めている“一風変わった”、面白い仕掛けのある広告を取材し、狙いやこだわり、アイデアの原点を探る。


 2月のとある日、渋谷に不思議な青い電話ボックスが現れた。

広告 2月、渋谷に現れた謎の青い電話ボックス(提供:みずほ銀行春の新生活応援キャンペーンPR事務局、以下同)

 これは、みずほ銀行が展開した体験型イベント「やさしい電話ボックス」だ。普段はなかなか人に言えない、新生活への意気込みや悩みを打ち明けることができるという。連日多くの人が訪れ、個人的な悩みや不安を受話器ごしに伝えていた。

 企業が電話越しに生活者のお悩みを聞く……。なかなか珍しい体験イベントのように見えるが、どういった狙いでやさしい電話ボックスを展開したのか。制作を手掛けたGO(東京都港区)の三浦崇宏・エグゼクティブクリエイティブディレクターに話を聞いた。

寄せられたお悩みにはラジオで回答

 「やさしい電話ボックス」(みずほ銀行オリジナルの白い電話ボックス)は、2月1〜7日にSHIBUYA109前広場で、2月10〜11日にはMIYASHITA PARK遊歩道に展開した。

 新生活への意気込みや悩みを話してくれた体験者には、その内容に応じた応援メッセージが記載されたカードをプレゼント。

 また、3月4日から「渋谷のラジオ」内で期間限定番組としてスタートする「やさしいラジオ」の中で、やさしい電話ボックスに寄せられた生活者の意気込みや悩みに対しパーソナリティーが回答。実際に人と人とのコミュニケーションを介して、ユーザーの生活や悩みに寄り添っていく。

 パーソナリティには鈴木おさむさん(放送作家)、山科ティナさん(漫画家)、平野綾さん(声優)、ハリセンボン(芸人)、中山きんにくんさん(芸人)を起用した。

広告 応援メッセージは多くの人々の悩みや不安に寄り添えるように、無数のパターンを用意

なぜ電話ボックス? 企業が「悩みを聞く」体験を訴求した狙い

――「やさしい電話ボックス」を展開した狙いを教えてください。

三浦さん: みずほ銀行はATMの数がメガバンクの中で最多。唯一47都道府県全てに銀行を設置している、ユーザーに寄り添うやさしい銀行です。今回はそんな姿勢を、ブランドを象徴する新しいアクションで多くの生活者に伝えたいと考えました。

 新生活応援キャンペーンというと、明るく前向きなメッセージのものが多いですが、実際は何か新しいことを始めるときには不安がつきもの。みずほ銀行が、そんな一人一人の不安に寄り添い、話を聞くことができたらと考えて、電話ボックスの企画になりました。

 新入生や、新入社員だけではなく、全ての何か新しいことを始めようとする方々に届けばいいと思っています。

――「電話ボックスで実際に利用者が悩みを吐き出せる」、このアイデアはどのような点から着想を得られたのでしょうか?

三浦さん: 企業のメッセージを生活者に伝える一方通行の広告・キャンペーンが多い中で、逆に生活者の悩みや不安を企業側が聞いてあげるという仕組みが今の時代にはあってもいいのではないかと考えました。

 そのとき、何か不安や悩みを打ち明けるためのモチーフとして、匿名性の高い電話ボックスを考えました。平成ノスタルジーという言葉があるように、レトロなデザインの電話ボックスは、多くの若者に関心を持ってもらえるかと考えましたね。

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