60代以上の「アクティブシニア」をターゲットとするクラブツーリズムでは、「一緒に旅行に行ける配偶者や友人が亡くなってしまった」という顧客の声を受けて、1997年に国内外のひとり旅ツアーを販売した。
需要増が目立ち始めたのはコロナ禍以降。それ以前は、市場規模がそれほど大きくないカテゴリーとして穏やかに拡大してきたが、コロナ禍によって誰かを誘うことが難しくなり、おひとりさま消費の加速に拍車がかかったようだ。コロナ禍明けの2023年ごろからは、新規顧客の増加も目立つという。
「2024年度の国内のひとり旅ツアーの売り上げは、前年比115%の見込みです。年間で約1300コースを販売しており、新たに誕生した宿泊施設を積極的に取り入れるなど常に新鮮さを感じられる商品を提供できるよう注力しています」(クラブツーリズム 新村氏)
阪急交通社では、競合がひとり旅ツアーの販売数を増やしていたり、通常のツアーに1人で参加する客が増えていたりしたことから、2008年ごろに国内のひとり旅ツアーを販売した。一定の実績を積んだ後、2019年から海外でも同様の展開を始めた。2024年のひとり旅ツアーの参加者数は、国内が前年比1.5倍、海外が同2.5倍と反響の大きさがうかがえる。
同社で海外のひとり旅ツアーを担当する後藤氏もまた、「コロナ禍を経て急激にひとり旅の需要が増えた」と話す。
「コロナ禍以前は、海外のひとり旅ツアーは半年に1本催行するかどうかの状況でしたが、旅行が再開されてからはグッと催行数が増えています。1人行動が一般化してきたのに加えて、国によっては帰国条件が厳しくなったり、旅行代金が上がったりして、友人を誘いづらくなったという声をよくお聞きします」(後藤氏)
円安の影響で海外ツアーの代金は、コロナ禍以前の2〜3倍に上昇している。友人などを誘いづらいが、それでも旅行に行きたいと考える人が、宿泊施設・飛行機・現地観光がパッケージになった利便性の高いひとり旅ツアーを選ぶようになり、需要が増しているようだ。
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