8859億円の内訳で最も大きいのは、キャッシュレス決済の取りこぼしだ。つまり、現金ではなくキャッシュレスで支払っていれば、受け取れたはずのポイントを意味する。金額にして6361億円、全体の71.8%。残りの3割弱を、家電量販店822億円、航空702億円、ガソリンスタンド256億円など、業種別の取りこぼしで占められる。
NRIが「キャッシュレス決済」の項目で数えているのは、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、コード決済にひもづいて付く「決済ポイント」だけだ。同じ買い物で店側のアプリから付く購買ポイントは、家電量販店やドラッグストアなどの業種側で別に計上されている。だから6361億円が指しているのは、「会員証を出し忘れた」のような店頭の話ではない。「何で払ったか」という点である。
ただ「何で払うか」は、消費者の選択だけでは決まらない。
経済産業省の集計では、2025年の国内キャッシュレス決済比率は58.0%、決済額は162.7兆円。年々伸びている数字ではある。ただ裏を返せば、いまだ4割強の支払いが、決済ポイントの付かない現金などで行われている。そして、実はその4割強がどこに残っているかには偏りがあるのだ。
例えば、公共交通。国土交通省が2024年に公表した資料によれば、車両30両以上を保有する主要バス事業者でも、一般路線バス車内の現金決済比率は全体で約10%に上る。なお、公共交通は、足元の取りこぼし額の内訳というより、NRIが今後の成長余地がある領域とみている。
医療機関でもキャッシュレスの広がりは均一ではない。厚生労働省の外国人患者受け入れに関する実態調査では、全国の病院でクレカを導入している割合は64.5%まで広がったが、QRコード決済は6.8%、その他の電子マネーも8.8%にとどまる。会計窓口で「PayPayで」と切り出してみたところで、端末そのものがない、というのが現状だ。中小の飲食店にも、いまだ現金のみの店は珍しくない。
病院QRコード導入病院のQRコード決済導入は6.8%。会計窓口で『PayPayで』と切り出してみたところで、端末そのものがないのが現状だ(出所:厚生労働省『医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査』)2029年に向けたポイント発行額の成長要因としてNRIが挙げているのは、新しい高還元プログラムの登場ではない。「公共交通機関でのタッチ決済の導入」と、「これまで現金決済が主流であった中小飲食店・医療機関への導入拡大」だ。
要するに、ポイントが付く支払い手段が生活の隅々までは届いていない、という現状を「成長余地」と呼んでいる。一方では消費者が取りこぼしていると言いながら、別の場所では「これから埋める余地」と書いているわけだ。
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