決済環境が整ったとしよう。次に立ちはだかるのが「最大」の二文字だ。
三井住友フィナンシャルグループの総合金融サービス「Olive」は、対象のコンビニや飲食店で「最大20%還元」を掲げる。三菱UFJフィナンシャル・グループも、2025年6月に新ブランド「エムット」を始動させた。こちらも対象店舗で最大20%還元を打ち出している。NRIが「金融業界の囲い込み競争」を発行額拡大の後押しに挙げたのは、こうした動きを念頭に置いている。
ただ、20%という還元率は、簡単に受けられるものではない。Oliveの場合、最大還元率に近づくには、スマホのタッチ決済、家族ポイント(対象家族の登録人数で加算)、SBI証券でのVポイント投資やNISA口座での投資信託保有資産評価額、SMBC日興証券の利用、住宅ローン契約など、複数の条件を組み合わせていく必要がある。
エムットも構造は似ている。月間利用額、給与・年金の受け取り、住宅ローン、投信や外貨の積立、特定サービスのカード払いなどの条件を積み上げて、ようやく上限に近づく仕組みで、最大還元の対象となる利用金額には月5万円の上限もある。
銀行口座も、証券口座も、給与振込先も、住宅ローンも、投信・外貨の積立も、1つのグループにそろえた人だけが、看板である20%に近づける。「最大」に届くために必要な条件を、もう一度並べてみればよい。すでに金融資産にも給与にも余裕がある層に近い顔ぶれである。高還元をいちばん必要としているはずの層から見れば、その入口は遠い。
つまり「最大20%」は、平均的な家計が日々のスーパーやコンビニで実現できる値ではない。グループ各社の窓口を行き来して契約を組み替え、多くのサービスを一つのグループにまとめた人だけが、その上限に届き得る、という設計上の天井だ。
NRIの8859億円は、業界ごとの平均的なポイント適用率と還元率を当てはめた推計だから、もともとこの種の高還元プログラムを最大条件で織り込んだ数字ではない。むしろNRIが来年以降の押し上げ要因として明示するのが、こうした金融グループによる囲い込み競争のほうだ。
同じ言葉でくくられているせいで、「最大20%」に届かなかった生活者の側に努力不足の影がうっすら差してしまうが、看板の20%は、もとから別リーグの話なのだ。
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