インフラの偏りや還元設計の話とは別に、もう一つ気になることがある。そもそも、ポイントを取れば必ず得をするのか、という疑いだ。
マーケティング研究には、ロイヤルティプログラムの「割の良さ」を現金と直接比べた古典的な分析がある。この研究では、6つのプログラムの商品交換カタログに掲載された約7000品目を対象に、「ポイントで交換する場合」と「現金で購入する場合」を比較した。具体的には、ある商品をポイントで手に入れるには、何円分の買い物が必要になるのかを算出している。
一方、同じ商品を店頭やECで現金のまま買えばいくらか。両者を並べたところ、ポイント経由で手にしようとするほうが、現金で買うより割高になる商品が、平均して多かった。レジに並ぶ手間や情報を集める時間を勘定に入れる以前に、ポイント交換という仕組みそのものが、必ずしも消費者の利得を保証しないというのが研究の論点だ。
日本の共通ポイントにそのまま当てはめられるわけではないが、「貯めれば必ず得」というイメージが、いつでも自動的に正しいわけでもない。
この感覚は、ポイ活経験者を対象にした調査にも数字として現れている。CCCMKホールディングスが2025年9月に行った調査では、ポイントを貯めたり使ったりしたことがある回答者のうち、「ポイ活を継続できなかった経験がある」と答えた人が37.8%、約3人に1人に上った。
理由のトップは「労力の割に、ポイントが貯まっている実感がなかった」(45.2%)。次が「還元率が高くなるキャンペーンや方法が難解で分かりづらかった」(26.2%)。同調査は、こうした層を「ポイ活キャンセル界隈」と名付けている。
この呼び名は、彼らがポイント経済から脱落した人々であるかのような響きを持つ。しかし回答の中身を読めば、むしろ逆だ。労力と還元を秤(はかり)にかけ、見合わないと判断して降りている。怠慢ではなく、算盤の結果としての撤退である。「キャンセル」されているのは、ポイ活ではなく、ポイ活が要求してくる手間のほうなのだ。
8859億円のうちいくらかは、彼らが「降りた」分だ。「取りこぼし」と呼ぶ前に、それは「取らない選択」でもあったかもしれない。
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