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アシックスはいかにして復活したか──「箱根駅伝着用ゼロ」の屈辱から売上高1兆円を叩き出した「選択と集中」(4/6 ページ)

» 2026年09月02日 07時00分 公開
[中西享, 今野大一,ITmedia]

バットも体操着もやめる 営業赤字から脱却させた「集中と選択」

 廣田氏が果たした構造改革は、最速シューズの開発だけにとどまらない。本質的な勝因は、事業のポートフォリオを研ぎ澄ませた「集中と選択」にある。

 「アシックスのモノづくりは、間違いなく世界一でした。しかし売り方、ターゲット設定、収益の管理、そして経営の回し方が下手だったんです」

 廣田氏が社長に就任した当時、同社は野球のバットやグローブなどの道具類、競泳水着、学校の体育授業で納品される体操着や定番シューズまで、多種多様なスポーツ用品を手広く手掛けていた。しかし、それらの多くは薄利多売であり、経営リソースを分散させる要因となっていた。

 そこで廣田氏は決断した。一番になれる可能性の低い野球の用具事業、水泳ウェア、学校納品用アパレルから次々と撤退。さらに国内市場においては、実質的に利益を生んでいなかった8000円以下の低価格帯シューズの展開を原則として取りやめた。

 「自分たちが“圧倒的一番”になれるランニングシューズに、経営資源の全てを集中させる。強くない領域、利益を出せない領域からは潔く手を引くことにしたのです」

 この決断により、売上構成はシューズが95%、アパレルが5%という高収益体質へと変貌を遂げた。低価格帯の普及品を減らし、1足2万円前後の高価格帯トップモデルを優先的に生産・展開したことで、売上総利益率は跳ね上がった。

 生産体制においても、かつての日本国内生産から韓国・釜山、中国を経て、現在は効率的な人件費と、高い裁縫技術を両立できるベトナムとインドネシアへとシフトした。海外生産比率は98%に達している。

 中東情勢の緊張による部材の供給懸念に対しても、年内生産分を早期に確保するサプライチェーンを構築し、隙のない経営基盤を完成させた。

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