なぜ、このように労働集約的で、生産性が低いはずのオペレーションが維持できたのか。それは失われた20年といわれたデフレ時代に賃金が上がらない環境が続いたこと。そして主婦層がパートとして働いてくれたため、人件費を抑えた運営が可能だったためである。
しかし、コロナ後のインフレで環境は大きく変わった。スーパーのオペレーションコストは急騰し、この仕組みが持続できなくなったのだ。
業界では、人件費の高騰、冷凍・冷蔵などの電気代の高止まり、価格転嫁の難しさという三重苦により、生産性の低いこれまでのオペレーションが維持不能となっている。
これを解決するには、店舗での工程を極力減らし、集中加工センターでの作業で生産性を上げるしか方法がない。しかし、これには一定の店舗数とインフラ投資が必要だ。
これはスーパーにも規模の利益が働く時代が到来したことを示している。かつて都市型のレールサイド企業が地方のロードサイド市場を敬遠していたのは、店舗ごとにバックヤードの人員や加工設備を設けるコストが見合わなかったからだ。しかし、近年のコールドチェーン(低温物流網)の進化や高度な冷蔵保存技術により、広域に配送しても高い鮮度を維持できる環境が整った。
つまり、大型の集中加工センターで一括処理した商品を広域配送する物流網さえ構築できれば、立地特性(レールサイドかロードサイドか)の壁は消え去る。 店舗ごとの重複設備や過剰な人件費をカットできるため、遠方の地場エリアであっても十分に採算の合うオペレーションが可能になったのである。
こうした環境変化は、わざわざ消費者にアピールする話ではないため、情報発信はほとんどされていない。
しかし、すでに大手や地場の有力スーパーでは、集中加工センターの整備は急速に進みつつある。生鮮、総菜の加工工程の大半がセンターで処理され、インストアとのハイブリッドに移行しつつあるのである。こうした運営体制を構築するのが難しい地域の下位チェーンでは、収益力が急速に低下している。業界関係者の間では、今後、規模の利益を享受できる企業とそうでない企業との収益格差がさらに広がり、これまでにないペースで寡占化が進むとの見方が強まっている。
そのため、戦国時代の後半、各地の小さな勢力が有力な戦国大名の配下に入ったり、同盟を結んだりして生き残りを図ったように、この業界でも存続に向けた提携が、水面下で一気に動き始めているのである。
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