シャッター動作には問題なさそうな機体だが、とにかくファインダがホコリだらけでどうにもならない。まずはプリズムも含めて光学系を掃除する必要がある。
OM-10の分解に関しては、ネットの情報ではなく、たまたま購入してあった書籍を参考にした。カメラの修理を始めたばかりの頃に参考までに購入した、「ジャンクカメラの分解と組み立てに挑戦!」(技術評論社)という本である。これまであまり国産のカメラに興味がなかったため、出番がなかった。
手順に従って、まず軍艦部を開ける。ファインダの接眼部を裏側から掃除しただけで、かなり綺麗になった。どうも内部に張ってあるモルトが劣化して、大量のゴミを放出しているようだ。
経年劣化でこれだけ問題になることが分かっていたら、おそらく多くのカメラ設計者はモルトなど使わなかっただろうが、当時はそんなことまでは分からなかったのだろう。個人的には、このようなモルトを製造・供給していたメーカーの責任は重いと思う。
右上にある大きなゴミは依然として残っている。プリズム底部の汚れかもしれないと思い、プリズムを外してみた。そこで分かったのだが、これはゴミではなく、プリズムの蒸着ミラーが腐食してできた穴だった。
表面からはまったく分からないので、蒸着の内側の腐食だろう。もうちょっと派手に腐食していれば、別の方法も試すところだが、これぐらいなら実用上は問題ないということで、我慢することにした。
スクリーンも掃除してみたが、大きな傷が入っている。OM-1など高級機はスクリーン交換が可能だが、OM-10はそういう作りにはなっていない。だが分解して外せる限りは、交換できないわけでもないだろう。
そこで後日、ジャンク屋を巡ってEOS用のスクリーンを800円で買ってきた。サイズは少し横が大きかったので、削ってサイズを合わせ、装着した。センターのスプリットイメージが無くなってしまったが、まあ実用上は問題ないだろう。
さて、本体はこれでなんとかなったが、実はレンズをまだ買ってないのだった。そこで打ち合わせの帰りに少し離れた中古屋まで足を伸ばし、ワケアリで3000円の50mm/F1.8という標準レンズを購入した。
そのワケとは、内部にあるでっかいホコリである。それ以外は拭き傷もない、綺麗な玉だった。今回はよくよくホコリに祟られたものである。
OLYMPUSのレンズは、以前PEN F用の標準レンズを分解掃除したことがあって、だいたい分かっている。ズームレンズは構造が複雑だが、単玉はそれほど難しくない。特にOLYMPUSのレンズは設計が合理化されているため、メンテナンスしやすい。
OMレンズは、結構カビ玉が多い。ガラスの質なのか、コーディング材なのか原因は分からないが、そういうワケアリのレンズが多いシリーズである。レンズの汚れも、ちょっと見ただけではなかなかホコリなのかカビなのか見分けが難しいが、前玉に近い方ならば多少の傷やホコリは問題にならない。だがまあこんなことは、趣味の撮影だから言えることで、プロの場合はそうはいかないだろう。
1点のホコリを目指して、前面から分解していく。前玉のレンズ群をまとめて外したところで、その裏側にゴミが付着していた。レンズ単体ずつバラすことまで覚悟していたので、これはラッキー。しかし密閉されたレンズ内で、一体どこからこんな大きなゴミが入るのだろうか。永遠の謎である。
ゴミを綺麗に拭き取り、ブロアで細かいチリを吹き飛ばしたあと、素早く密閉する。本来ならばきちんとダストクリーニングされた空間で行なうべき作業なのだが、素人修理ではそこまでは無理である。
OMレンズは、Pen Fのレンズもそうだったが、レンズ本体に絞りプレビュー用のスイッチが付いているので、本体のグレードに関わりなく絞りの状態が見られるのはありがたい。また絞りリングがレンズ先端に付いているので、絞り優先の場合も手探りで操作しやすい。ただフォーカスの回転がNikonなどとは逆なので、しばらく馴染んでいないとつい逆に回してしまう。
OMシリーズは、イマドキのデジタル一眼と比べてもコンパクトにまとまった、綺麗なカメラシステムだ。持ったバランスもいい。どこでも気軽に持ち歩ける一眼は、OM-1から始まったのだろう。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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