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極上性能をコンパクトに凝縮、ハンディカム 「HDR-CX520V/CX500V」秋のフルHDビデオカメラ4番勝負(1)(1/2 ページ)

» 2009年09月18日 18時39分 公開
[都築航一,ITmedia]

 ソニー「ハンディカム」シリーズは、今春の「HDR-XR520V/XR500V」で驚異的に高い暗部画質と強力な手ブレ補正機能を実現してみせ、市場の話題をさらった。この秋冬商戦では、各社がこの強敵にどう立ち向かうか、という構図になったわけだが、本家ソニーも同じタイミングで新モデルを2機種追加し、突き放しにかかっている。

 それが今回取り上げる「HDR-CX520V」および「HDR-CX500V」だ。両製品は搭載メモリ容量と本体のカラーリング以外の仕様はほぼ共通で、今回は32Gバイトのメモリを積んだシルバーモデル「HDR-CX500V」を選んだ。

photo 32Gバイトのメモリを搭載する「HDR-CX500V」。64Gバイトモデル「HDR-CX500V」の外装色はブラックだ

さらに強力になった手ブレ補正

 HDR-CX500Vは、32Gバイトの内蔵メモリとメモリースティックProデュオへ、1920×1080ピクセルの映像を記録可能なAVCHD形式のデジタルビデオカメラだ。ソニーは昨年も春モデルでHDD記録機、秋モデルでメモリ記録機を投入しており、このパターンを今年も踏襲した形ではあるものの、各社とも上位機の基本仕様が「メモリ記録のフルHD対応AVCHD機」へとほぼ一本化しつつあるのにあわせたものともいえる。

 撮像素子やレンズといった、カメラとしての基本的な部分はHDR-XR520V/500Vを受け継いでおり、「Exmor R」と銘打たれた1/2.88型663万画素の裏面照射型CMOSに、自社製の光学12倍ズームレンズ「Gレンズ」が組み合わされるハイエンド機らしい構成だ。

photophoto レンズ周辺には「G」の文字が誇らしげに刻まれている

 Exmor Rのウリである暗い場面でのノイズの少なさはもちろん、6枚羽根絞りによる美しいボケ味といった特徴も健在。また、付加機能としてはHDR-XR520V/500Vに引き続きGPSユニットを搭載しており、内蔵の地図を使って撮影済みデータを視覚的に探すといった楽しみ方も行なえる。

 画質を左右する部分での変更点は、春モデルで群を抜く効果を実現した手ブレ補正機能がさらに強化されたことだ。ジャイロの数はHDR-XR520V/500Vの2つから3つに増やされており、縦横に加え、回転方向のブレを軽減するという3方向補正が行われる。最も強力に補正がかかる「アクティブモード」にすると、ワイド端時の補正角が10倍となり、歩きながらの撮影などでのブレを大きく抑制することが可能だ。

 走り回る子供やペットを、追いかけたり並走したりしながら撮ってみると効果を実感できるが、被写体に集中するあまり、カメラの保持がおろそかになりがちな場面でも、うまくフォローしてくれる。今回のモデルチェンジで追随してきた他社製品も、まだまだ力不足と感じるほど、この手ブレ補正機能は圧倒的。しかも、急に動きを止めたりといった意地悪な動きにもきちんと追従する自然さも兼ね備えており、同社のリードは揺るがない印象だ。

後ろ向きに歩きながらの撮影。手前に歩いてくる女の子との会話、後ろ向きでの歩きとなかなかカメラまで気が回っていない状況だが、きちんとブレ補正が働いている。笑顔を感知して自動的に静止画を保存していく「スマイルシャッター」はこうした時に重宝する

春モデルの魅力そのまま、ボディを小型化

 ボディサイズとデザインもHDR-CX500Vを特徴づけるポイントに挙げられる。各社ともハイエンド機は画質や機能を優先するという名目のもと、ボディのコンパクト化にあまり積極的でなくなってきているが、記録メディアをメモリとしたこともあり、春モデルに比べると大きな小型化が実現している。

 加えて、春モデルではレンズのすぐそば(液晶モニターの手前)という目立つ位置にあるため「見た目がゴツくて操作も難しそう」というイメージを与えかねなかったマニュアル操作用ダイヤルを、液晶モニターを開いたボディ内側という目立たない場所へ移したことも奏功し、ハイエンド機独特の威圧感を取り払うことにも成功している。

 外装色が明るいシルバーのCX500Vはこの変更もあり、“おとなしい”印象を与える。ただ“おとなしい”ことは“難しくなさそう”に繋がり、こうしたメカに苦手な印象を抱いているママ層でも手に取りやすそうなイメージの演出に成功している。こうしたイメージづくりと、各社最上位機と互角以上の高画質を両立できた点が本製品のキモといえる。

photophoto 春モデル「HDR-XR500V」では目立つ位置にあった(写真=左)マニュアル操作ダイヤルが、ボディ内側に移動した(写真=右)

 半面、小型化で犠牲になった部分も残念ながら存在する。前述のダイヤルは本体の背面に大型なものが用意されているが、指の腹で回す感覚はやはり従来機種に比べてもどかしく、本格的なマニュアル操作に使うというよりは、AEシフトやホワイトバランスシフトといった微調整を手軽に行なうのためのものと考えたほうがいいかもしれない。

 液晶モニターもスペックダウンしている。サイズが3.2型から3.0型へとわずかに小さくなったのはともかく、HDR-XR520V/500Vの92.1万画素という非常に精細なパネルは、23万画素という平凡なものになってしまった。加えて、屋外での視認性を優先した半透過パネルのため、色味が浅く眠い映像に見えてしまい、せっかくの高画質を撮影時に実感できないのが何とももったいない。

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