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小春日和にこそ似合うカメラ――オリンパス「C-2020 Zoom」矢野渉の「クラシック・デジカメで遊ぶ」(1/2 ページ)

» 2011年12月14日 11時00分 公開
[矢野渉,ITmedia]

オリンパスのシェアを確立した名機

 オリンパスは日本の大手カメラメーカーの中で唯一、レンズ交換式のオートフォーカス一眼レフ機から撤退してしまったメーカーである。OMシリーズでは一定の評価を受けながら、オートフォーカス一眼はレンズ固定式のみとなり、それまでの財産をリセットしてしまったのである(※初出時、本カ所の記載について誤りがありましたので訂正させていただきました。2011年12月14日 14分20分追記)。

 フラッグシップ機を失ったカメラメーカーはイメージ的に弱い。漠然とだが「格下」の印象がぬぐえなくなってしまうからだ。オリンパスには内視鏡というメインの事業があり、カメラ事業は二番手にすぎない。他のカメラメーカーが自由に製品を開発する中、オリンパスのカメラ開発に関わる技術者たちは悔しい思いをしていたに違いない。

 ところが1990年代のなかば、オリンパスにチャンスが訪れる。写真のデジタル化だ。それまでのフィルムベースの写真業界が根底からリセットされるのだ。ここでオリンパスは会社をあげてデジカメを推進し始めた。それまでのうっぷんを晴らすように積極的に新製品を投入し、大物芸能人を使った宣伝、キャンペーンを繰り広げた。

 そのかいあって「CAMEDIA」というブランドは充分に浸透し、ここで次の段階へという時期に発売されたのが1999年の「CAMEDIA C-2020 Zoom」だ。

photo オリンパスのデジカメというとこのデザインを思い浮かべる人も多いだろう。往年の高級コンパクトカメラを意識したカタチだ。太く黒いグリップと、本体のチタンカラーの対比が美しい

 この年はクラシック・デジカメの当たり年だった。春にはニコンから「COOLPIX 950」、そしてオリンパスからはC-2020の前モデルとなる「CAMEDIA C-2000 Zoom」が発売され、ともに大ヒットした。そして秋にはニコン「D1」が出現し、フィルムの時代が終わったことが強く意識された。

 そんな中、C-2000をマイナーチェンジしたC-2020は1999年を締めくくるように11月に発売されたのだ。

photo 背面。操作性は現在と変わらない。説明書が無くても容易に撮影ができる。1.8型ポリシリコン液晶はかなり色温度が低い(赤い)ので注意が必要だ
photo 35ミリ換算35〜105ミリの三倍ズームレンズ。F2.0〜2.8の開放値は驚異的だ

 好評だったC-2000 Zoomの弱点をほぼすべて修正し、マニュアル露出モードやマニュアルでのピント合わせが可能になり、音声無しだが動画撮影もできるようになったC-2020 Zoomは、かなり完成度の高いデジカメだ。メーカー希望小売価格11万3000円という値段も納得できるポテンシャルがある。

photophoto モードダイヤルにはC-2000にはない「M」モードと動画モードが加えられた(写真=左)、ホットシューがない代わりに外部ストロボ用のシンクロコネクタが付いている。マニュアル露出モードと合わせて使えば、スタジオで自由なライティングが楽しめる(写真=右)

快適な操作性

 PC雑誌の「デジカメ特集」やレビュー記事の撮影で、当時僕は何度かこのC-2020 Zoomを触っている。良いデジカメだとは思ったが購入に至らなかったのは記憶媒体がスマートメディアだったから、というたった一点の理由だった。

 スマートメディアはこの時点で先が無いことは明白だった。また、なぜか相性の問題が頻発していたイメージがある(実際に、手持ちのスマートメディアのうち3.3V仕様の一枚がC-2020では認識されなかった)。C-2020がもしもCFカードを採用していたら、僕はこのカメラを買っていたかもしれない。

 今回改めてC-2020 Zoomを使ってみて、その起動の速さには驚いた。とても前世紀のデジカメとは思えない。スイッチを入れて撮影可能まで2秒弱と言ったところか。また合焦のスピード、メニュー画面の反応など、すべてキビキビと動いてくれる。唯一、データ書き込みと読み出しがちょっと時間がかかるが、これはスマートメディア側の問題なので致しかたない。

photophoto C-2000は32Mバイトまでだったスマートメディアは最大の128Mバイトまで対応している(写真=左)、電源は単三形乾電池4本(マンガン電池以外)。満充電状態で1日撮影できた(写真=右)
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