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インタビュー
» 2012年09月14日 12時01分 公開

プライドをかけたタフネスフラグシップ「OLYMPUS Tough TG-1」開発秘話(2/2 ページ)

[野村シンヤ,ITmedia]
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開発チーム同士の連携で困難を乗り切れ

――TG-1は既存モデルより防水機能も12メートル防水と強化されましたが、これ以上は難しかったのでしょうか。

:高須氏: ちょっと厳しいですね。耐水性能を強化するのは、ボディの強度やボタンの耐水性能などトータルで上げていく必要がありますから。現状以上の防水の実現も不可能ではないと思いますが、そうなるとコンパクトさが犠牲になると思います。トータルを考えた際には、現状がベストではないかと考えます。

 将来的にはもっと防水機能を上げて、水中ハウジングをつけずに潜れる深度を、もう少しスキューバダイビングで使いたい人が不安を感じないところまで持っていきたいとは考えています。あとは、タウンユースとのバランスもとりながらですね。

――耐衝撃2.0メートルに加え、耐荷重100kgfについて、設計するにあたって問題はどのように解決したのでしょうか?

高須氏: 耐荷重100kgfのところはそれほど困難ではないのです。防水性能10メートルレベルを達成すると考えると、どうしても剛性を上げなくてはいけない。そこで、これまで蓄積したノウハウを盛り込み、余裕を見込んだ設計とすることで達成できました。

 ただ落下、耐衝撃に関しては難しかったですね。パーツの中でも重いレンズが既存製品より大きくなっているのと、バッテリーも大容量品で重量があります。重くなるとどうしても衝撃のエネルギーは大きくなってしまうので、その分かなり苦労がありました。耐衝撃を実現するために採用している技術としては、「ダンパー機構」があります。これはレンズ自体をユニットの中で宙に浮いているような状態にするものです。

 従来式では、レンズに対して正面にダンパー機構を積んで、そこでフローティングさせていたのですが、それだとどうしても大きくなって重くなり、バランスがとりづらくなってくるのと厚さの方も増してしまう。というので今回は上下2カ所に分けてバランスを取るサイドダンパーとして、衝撃を分散させて耐えていこうという構造に変えています。

小野氏: F2.0を達成しようとすると、どうしてもレンズ口径が大きくなりますし、レンズ自体も重量があります。そして従来方式でレンズにダンパーをつけようとすると、ダンパーの機構全体が厚く大きなものになり、ボディサイズも厚く大きなものになってしまいます。それを解決するため、分散させるダンパーユニットをメカの設計部隊と一緒に取り組みました。

photo 光学設計を担当した小野氏

――そうなってくると本当に横のつながりを重視して連携を強化していかないとカタチにならないですよね。

高須氏: そうですね。TG-1についてはそうした連携を意識して開発に取り組みましたが、そこは苦労したところでもあります。今までですとシリーズを重ねているので開発もある程度こなれており、極端に言うと、自分のユニットごとで進化させていけば、最後は何とかモノになるだろうといった感じでした。

 今回はこれだけ新規になっているので、説明したような横のつながりがないと、製品としてできあがらないという厳しい現状がありました。それとTG-1を手掛けているさなか、他社からタフネスモデルが多く登場したことも、開発関係者に危機感を与え、連携がスムーズになりました。結果論ですが、意識統一して物作りにあたれたことはよい経験になったと思います。

レンズはカメラの真ん中に――こだわりの理由

――TG-1は既存シリーズ製品とまったく違う、レンズを本体中央に配置したデザインになっているのですが、そのあたりはどういった考えがあったのでしょうか。

高須氏: まず「F2.0というカメラ」を意識して、真ん中にレンズを持ってきたいという考えがありました。これは、カメラとしてのアイコンを意識してのことです。もちろん今までの製品のように端にレンズをレイアウトしても作れるのですが、やはりイメージとしても訴求したいというのもありました。やっぱりカメラのアイコンとして、真ん中にレンズがあると写りがよさそうなイメージがあると思いませんか?(笑)

 加えて、せっかく明るいレンズにしたのだから色々な広がりを持てるはずだと思いました。コンバージョンレンズをつければどんどん広がりを持てるはずで、やっぱり真ん中が最適じゃないかと考えたのです。ただ、技術的にいえば、これも逆行するようなのですけど、真ん中が一番やりにくいのです。

 先ほどの耐衝撃の話もそうなのですが、結果として、レンズはボディの端にあったほうが設計的には楽なのです。でも、あえてボディ中央にレンズを配置することで、“カメラ”としてのイメージを強く押し出すことにしました。作りやすさではなく、最終的なイメージを大事にしようということです。

photo あえてレンズを中央に配置することで、「カメラ」としてのイメージを大切にした

――F2.0レンズをボディ端に搭載することは、技術的には可能だったのでしょうか。

高須氏: 可能ですが、カメラとしてのアイコンを意識したほかにも、コンバージョンレンズによってカメラの世界観を広げたいという気持ちもありましたから、中央配置でいくことにしました。

小野氏: もちろんボディの端にレンズがあってもコンバージョンレンズは装着できます。ですが、バランスが悪くなりますよね。やはりカメラって、たたずまいのカメラらしさも大切だと思うのです。TG-1については企画の段階からコンバージョンレンズの話があって、そうしたオプションを含めての世界観を作っていこうと話していました。

 コンバージョンレンズだけではなく、PLやNDのフィルターを利用することで表現の自由度をより高めることができます。レンズをボディの中央に持ってきたことで、やれることが増えていくのです。

高須氏: タフネスカメラを中心とした世界観の拡張というのは以前からのテーマでした。ですが、実現に際して母体(カメラ)をどう位置づけるかはなかなか難しい。コンバージョンレンズ自体の技術的な問題はさほどありませんが、タフネスモデル専用として開発して、なおかつ世界観まで見せるものとなれば、カメラ本体のデキがよくないと成り立ちませんから。

 タフネスという要素で取れる場所の拡大を続けてきたのですが、TG-1では光学性能を引き出し、さらにアクセサリを組み合わせることで撮影領域の拡大を狙いました。そのためにはレンズのセンターレイアウトは必要だったといえます。

 カメラの真ん中にレンズがあるというのは、一見すると何の変哲もないことなのですが、TG-1に関していえばコダワリと苦労の結実なのです。

タフカメラと好相性のマクロ機能

小野氏: もうひとつ、とっておきの話がありますがどうしましょうか?(笑)

――ぜひ、聞かせてください(笑)

小野氏: レンズはその明るさに注目されてしまいがちですが、マクロ機能にも力を入れています。ワイド端で15センチ、テレ端でも10センチまで被写体に接近できます。

 加えて1センチまで寄れるスーパーマクロの設定もあって、これを使うとデジタル一眼でいうマクロレンズに相当する、ほぼ等倍の写真が撮れます。防水性能を備えたタフカメラですから、水中でもマクロ撮影ができるのです。

高須氏: マクロ撮影した写真を見ると、「大きいね」という感想にとどまってしまうこともあるのですが、自分で撮るとなると非常に面白いものです。タフとマクロの組み合わせは、いままで取れなかった場所で、撮れなかったものを撮るという広がりを提供してくれます。TG-1には「マジックフィルター」もあるので、その組み合わせを試すのも非常に面白いです。

 TG-1は防水・防じん・耐衝撃、耐寒といったタフネス性能に優れているので色々な場所に持って行けますし、コンバージョンレンズやマクロ機能、マジックフィルターといった写真の世界を広げるツールも豊富にあります。飽きることのないカメラなので、どんどん使ってもらいたいですね。


 今回のインタビューを通じて、「TG-1」というカメラは、今までタフカメラという市場をリードしてきたオリンパスがプライドをかけて、開発陣が一体となって作り上げた製品であることがひしひしと伝わってきた。

 フラグシップモデルとしてのイメージを共有することから始まり、屈曲光学系ズームでのF2.0の達成、カメラとしてのデザインを意識し、世界観も考慮したレンズの中央配置、アクセサリーの同時リリースなど、最上位機にふさわしい形を作り上げるために難問をチーム同士の連携強化でクリアしていった様は、モノ作り現場の理想像と言えるかもしれない。

 またそれを実現するために、ユーザーからの要望を真摯に受け止め、かつ自分たちで体験して改善点を洗い出すという、基本に立ち返っての開発はカメラメーカーとしての誇りを見た気がする。TG-1が見せてくれた新しいToughの世界。今後のシリーズ展開も注目していきたい。

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