さてニコン「D600」の長期試用リポート、第3回である。
最近、ちょっとした撮影はミラーレス一眼(OM-D)で済ませてしまうのだけど、どうしても一眼レフじゃないと追いつかない被写体もあって、その代表がスポーツ。
先日、宇都宮まで自転車ロードレースを見に行ったのだけど、自転車ロードレースを撮るといったような高速で移動する被写体を追う場合、ミラーレス機のAFでは追いつかないのだ。
止まったものを撮るならばミラーレス一眼(特にマイクロフォーサーズ系)でも十分に高速なピント合わせができるけれど、動体相手にコンティニアスAFを使うとなると分が悪い。かなり悪い。でも、位相差AFセンサーを積んでる一眼レフならば、シングルAFでもコンティニアスAFでも気にせず使える。だからこそ像面位相差AFなんていう新しいアプローチが出てきたのだけれど、実際に自転車ロードレースを撮ってみるとこうしたことを改めて痛感するのだ。
で、D600に70-300mm(「AF-S VR Zoom Nkkor 70-300mm f/4.5-5.6G」)をつけて遠くからスプリントをかけてくる集団をコンティニアスAFで狙ってみた。
D600のAFは39点測距と充実しているけれども、スポーツに強い上位モデルのAFに比べるといささか弱いところはあるし、AF測拠点が中央付近に集まっている(まあフルサイズ機はAPS-C機に比べてそういう傾向があるのはしょうがないのだが)けれども、中位モデルとして十分な性能を発揮してくれる。前後がきちんとボケるのもありがたいし。
お次は自転車。ロードレース会場まで自走して観戦に来る人のために巨大駐輪場が用意されてるんだけど、数が多すぎて毎回あふれてる。そんなあふれた自転車はみなこういったところにとめているのだ。落ちそうな斜面だけど落ちないらしい(たぶん)。さながら最新スポーツ自転車品評会の様相を呈していて、こちらも見ていて楽しいのだ。
APS-Cサイズより高い金を払ってまでフルサイズ機に期待することはなんだろうと考えると、フィルム時代からの一眼レフユーザーは「レンズの焦点距離と実際の画角が一致してるから換算しなくていいし撮りやすい」というけどまあそれはフィルム時代をよく知ってる人の話で、それ以外だと、被写界深度が浅くてよくボケるとか、階調が柔らかくて高画質とか、高感度に強いとか、要するにクオリティ。
特にセンサーサイズが大きい分、高感度に強いと期待するわけだが、カタログスペックを見ると、実はAPS-CサイズのD7000と同じなのだ。
常用ISO感度はどちらもISO100〜6400。さらに拡張ISO感度としてISO25600相当まで上げられる(実際にはH 1.0とかH 2.0と表示される)。これもD7000と同じ。
じゃあ両者はどのくらい違うのか。そこで撮り比べてみた。条件はどちらもノイズリダクション「中」で、F2.8でISO25600相当。
ノイズに関しては大きな差は感じなくて、背景のボケぐあいの違いの方が目立ってる感じ。では、いつもレビューでやってる画質チェックのパターンで超高感度のISO6400から25600までを。いずれも左がD600、右がD7000だ。
どっちもそれなりにノイズは目立ってくるけど(ノイズリダクションは「中」)、無理にノイズを消さないで多少ざらついてもディテールを残すという好感を持てる処理をしてるのがいい。で、比べるとD600の方が偽色ノイズが少なくてディテールが荒れてない。ちなみにD600の方の左上にもやっと黒いものが写ってるのはローパスフィルターにはりついたゴミです。すみません。掃除します。
で、ISO25600で比べるとわかりやすい。
という感じで、設定できるISO感度の上限は同じでも、D600の方が質が高いという結果になった。D600購入者としてはいささかほっとしたので、調子に乗って高感度写真をいくつか。
まずは夜のマンション。たまたま古くてでかい事業所が解体されて更地になったせいで普段は見えないマンションがぽかっと現れてたのだ。真っ暗な中にぽつんと巨大マンションだけが浮かんでるという感じが面白くて撮ってみた。電子水準器で水平を保ちつつ撮影。
次は室内で、右手にD600を持ち、左手で猫をなでながら撮影。こういうときってそれなりにシャッタースピードを維持したいので、どうしてもISO感度を上げることになる。そこでISO12800で。
さらにオモチャで誘ってみた。動いてるのでF2.8にしてISO25600まで上げて左手でうりうりと遊びつつ右手で撮ってみたのがこちら。
さすがにISO25600の写真を等倍で表示させるとノイジーだけど、けっこう撮れてるじゃないか。そんなわけで、ISO6400までが推奨ISO感度になってるけど、被写体やシチュエーションによってはガンガンあげちゃっていいじゃん、と思うのであった。
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