開放値F2.8通しの大口径標準ズームといえば、各レンズブランドを代表する「顔」のような存在だ。描写性能にとことんこだわり、技術の粋が惜しみなく注ぎ込まれている。ユーザーにとっては、いつかは購入したい憧れのレンズといってもいい。
オリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」は、そんな羨望の大口径標準ズームのひとつ。35ミリ換算で24〜80ミリ相当という、一般的に使用頻度の高いズーム域をカバーしながら、ズーム全域での開放値F2.8を実現。加えて、全長84ミリ、質量382グラムのコンパクト設計も魅力だ。これらのスペックを聞いただけで色めき立ち、思わず食指が動くのは私だけではないだろう。
実際の試用では、スペックから想像する以上の満足感が得られた。返却が惜しく感じられたほど。特に気に入ったのは、ズーム全域での安定した写りだ。開放値から画面全体でシャープな描写が得られ、被写体のディテールまでをくっきりと再現できる。特にF5.6〜8あたりの切れ味はお見事。ワイド側ではタル型の歪曲がやや見られるが、それ以外の各種収差は目立たないように補正されている。
外装は金属を多用した高品位な作り。今回使用したボディ「OM-D E-M1」と同じく防じんと防滴性能、耐低温性能を備えるので、悪条件下でも安心して使用できる。
レンズの鏡胴部には幅の広いフォーカスリングとズームリングがあり、どちらも滑らかな感触で操作できる。AFは独自のリニアモーター駆動によってスピーディに作動。AF駆動音は静かで気にならない。
機能面での特長は、マニュアルフォーカスクラッチ機構を備えること。これは、フォーカスリングを手前に引くことで、AFからMFに素早く移行できる仕掛けだ。距離目盛りを目安にしながらMFによるスナップを楽しんだり、フォーカスを無限遠に固定して夜景や風景を撮る際に重宝する。一部の既存レンズが備えるスナップショットフォーカス機構と比較した場合は、フォーカスの分解能がいっそう高められているとのこと。
使用上の注意点は、マニュアルフォーカスクラッチを使ってMFで撮影した後、リングをAFの位置にもどす習慣を付けたいこと。初めのうちは、MFになっていることに気付かずに撮るミスを数回してしまった。
最短の撮影距離は、ズーム全域で20センチに対応する。最大撮影倍率は0.3倍(35ミリ換算で0.6倍相当)と高く、ちょっとした接写用途にも生かせる。
これまでの一眼レフ用レンズの場合、各社を代表する大口径標準ズームによる絶品の写りを味わうには、レンズの大きさと重さを覚悟する必要があった。だが「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」なら持ち運びのハードルは低い。
今回の試用では、明るさと描写力を兼ね備えながら、小型軽量というミラーレスのありがたみが身にしみて感じられた。あちこちが痛くなる筆者のような疲れ切った中年にとっては、まさに負担の少ない身体に優しいレンズである。
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