オリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」は、全域F2.8の明るさを持つ大口径標準ズームだ。大口径でありながら、鏡胴がコンパクトにまとまっていることはマイクロフォーサーズレンズならではの利点。気軽に持ち運びつつ、風景から人物、スナップ、静物、旅行用まで幅広い用途に活躍してくれるレンズである。
このレンズのファーストインプレッションは、昨年秋の発売時に本連載で取り上げた通りだ(交換レンズ百景:明るい標準ズームで撮る旅の景色――オリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」)。ズーム全域で切れ味の鋭い描写が得られ、画質への満足度は非常に高い。そのときは主に風景を撮影したが、2度目の試用となる今回は、使いやすい焦点距離と明るい開放値を生かして、スナップ感覚のポートレート撮影を楽しんでみようと思う。
撮影日の天気はくもりとなった。風景やスナップを撮るなら、曇天よりも晴天のほうがメリハリがあって力強い写真になりやすいが、ポートレートの場合は個人的には曇天のほうが好みだ。雲がディフュザーの働きをして光が拡散し、陰影が目立たないソフトでしっとりとした雰囲気の写真になりやすいからだ。
上の写真は、そんなくもり空を明るく写すために、白トビしない程度までプラスの露出補正を加えたもの。空の微妙なトーンや波しぶきのディテールがきちんと再現できている。
さらにくもりの日は、ストロボによるライティングの自由度が高くなるメリットもある。太陽光が拡散して方向性が弱くなっているので、好きな位置にストロボ光をあてて狙いに応じたライティングが楽しめる、というわけだ。下の写真では、ワイヤレス発光モードにセットした外部ストロボを画面左から照射し、人物の顔を明るく表現した。うぶ毛までくっきりと解像する光学性能の高さも確認できる。
次のカットも外部ストロボをワイヤレス発光したもの。と同時に、フォーカスにもちょっとした工夫を加えて撮影している。というのは、ミラーレス用レンズでは珍しく距離目盛を備える本レンズの特徴を生かし、焦点距離を12ミリに、絞りをF8にそれぞれセットした上で、レンズの距離目盛を1メートルの位置に固定して写したのだ。
こうすることで、近景から無限遠までの広範囲が被写界深度内となり、その都度ピント合わせをする必要がなくなり、表情や構図などシャッターチャンス重視で撮ることが可能になる。いわゆるパンフォーカススナップと呼ばれる昔ながらの撮り方だ。ペットや子どもなど動きのある被写体を近距離で撮りたいときにも役立つだろう。なお、距離目盛がない他のレンズでもパンフォーカススナップは可能だが、距離目盛があったほうが任意のフォーカス位置にすばやく固定できて便利である。
次の2枚は、今回の使用ボディ「OM-D E-M1」のチルト液晶を利用して、ハイポジションおよびローポジションで撮影したもの。くもりの日は、背景が白い空になって写真が単調なイメージになりがちだが、こうしてカメラポジションに変化を与えることで、同じ撮影場所であってもさまざまなバリエーションが楽しめる。
次の写真は、薄暗い木陰にて露出を切り詰め、ローキーなトーンを狙ったもの。焦点距離はズームの40ミリ側を使用し、絞りは開放値にセットした。背景は滑らかにボケて、画面に奥行きが出た。
今回使用したボディE-M1は、5軸対応の強力なボディ内手ブレ補正機構が見どころのひとつになっている。このボディ内補正に全域F2.8の本レンズを組み合わせれば、暗所でのブレ対策は万全だ。薄暗いシーンでも感度をあまり高めず撮影できることがありがたい。下の写真はズームの12ミリ側で1/15秒、その次はズームの40ミリ側で1/10秒という低速シャッターを使ったが、どちらもほぼ手ブレすることなく、シャープな写りが得られた。
次の写真は、別の日に室内で撮影した骨董品のクローズアップだ。ポートレートだけでなく、こうした静物の撮影でも開放値の明るさが心強い。加えて、最短撮影距離20センチ、最大撮影倍率0.3倍(35ミリ換算0.6倍相当)という接写性能の高さも見逃せない。
最後の写真は、背の低い外灯を利用し、そこに顔を近付けてもらって撮影したもの。室内のようにも見えるが、実際には公園の草むらの中だ。上の2枚と同じくホワイトバランスを晴天にセットすることで電球の赤みを残し、暖かみのあるイメージにしてみた。
今回の撮影では、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」の幅広い表現力を存分に味わうことができた。モデルとなった手塚さんの魅力を引き出せたかどうかは分からないが、初対面ながら、さまざまな表情のバリエーションを少しだけは撮影できたと思う。カメラやレンズがハイグレードだからというよりは、一瞬の表情を逃さない高速レスポンスと機動力、狙いに応じた撮り方に対応する自由度を備えているからだ。
(モデル:手塚梨加 オスカープロモーション)
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