Linuxクライアントのキラーアプリは開発──WorkPlaceとEclipseが追い風にRational Software Development Conference 2005

IBMによるWorkPlaceへの1億ドルの投資は大きなインパクト。Eclipse基盤によってLinuxのクライアント利用は魅力的なものとなった。Rational Software Development Conference 2005でジョランズ氏が語るIBMの狙い。そして、各国のPCデスクトップ文化を踏まえた今後を聞いた。

» 2005年05月24日 20時20分 公開
[木田佳克,ITmedia]

 言わばMacOS Xは、MacOS以降「OSとして」リリースされたデスクトップアプリケーション実装のようなもの。IBMが推進するワークプレースは、サンが手がけるJava Desktop Systemに対する回答の1つとなっている。PCデスクトップで現在デファクトであるWindowsを背に向け、あえてLinuxデスクトップを好んで選択する理由は何か? インタビューで、その選ぶべき理由が明かされた。

 ネバダ州ラスベガスで26日(米国時間)まで開催の「Rational Software Development Conference 2005」。インタビューでIBM、ワールドワイドLinuxマーケティングのアダムス・ジョランズ氏は、各国のLinuxクライアント事情にも言及し、エンタープライズへと注力するベンダーでも、PCのデスクトップを牛耳ることが開発者の意向をくみ取る責務であることを語った。

国ごとの見方が異なるのも把握している。いま大切なのは、どのような側面で利用できるのかを整理すること。ジョランズ氏は、Linuxクライアントに対し追い風となっている要件を挙げた

 IDGからのLinuxにおけるアプリケーション開発の公式発表について、ジョランズ氏は2つのポイントを挙げた。今後「Linuxアプリケーション開発が増えていく」との見解、そして「この分野ではIBMがポジションリーチをしている」ことだ。

 なぜ? Linuxアプリケーション開発が今後注目されるのか。ジョランズ氏は、米国を始め中国での事情に触れると共に、比較的保守的な文化を持つ日本事情についてもコメントした。

 かつて米国でOSSを中心とするLinuxアプリケーション開発の常は、gccなどを直接触るコマンドライン全盛であった。それがGUIによる統合開発環境が整備されたことにより普及への大きなアドバンテージとなったことを強調する。ほかでもなくEclipseのことであり、JavaはもちろんC言語などによるLinuxアプリケーション開発の背景も挙げる。また、Rational Development PlatformがLinuxでも使えるようになったことも、Javaアプリケーション開発にシームレスなものだと語る。

 さらに、基盤となるサーバ利用で培われたミッションクリティカル要件にも十分満たされることや、オープンソースを追い風とするセキュリティ対策、PDAなど組み込み系で最終的な稼働環境がLinuxならば、開発も同環境で行えることも見逃せないポイントだという。

 Windowsデスクトップで事足りることこそが、現在はLinuxデスクトップ推進のいちばんの壁。ジョランズ氏は、現在の国ごとに異なる事情も把握していると言い、PCユーザーが興味を持ち始めた段階こそが追い風と言及する。

 幾つかの側面としてジョランズ氏が挙げたのは、ハリウッドにおけるハリーポッターやシュレックの開発環境としての採用、投資対効果によるシフト、PDAなど組み込み系はもちろんATMなど公共への採用、そしてアプリケーション開発の領域だという。今後の展開としては、WorkPlaceにおけるオフィスアプリケーションの整備が急務であり、先ごろ発表されたWorkPlaceへの1億ドルの出資意向については、IBMの本気の現れだという。

 国ごとに見方が異なっていることも理解しているとジョランズ氏。Linuxデスクトップという局面では中国が最も進んでいるが、日本や英国はWindowsへの執着があることを把握している。機能限定の広まりこそが原動力になると言い、前述した展開こそがLinuxクライアント(Linuxデスクトップ)のキラーとして受け入れられる要因だと語った。

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