情シス部門がこれから始める「裏稼業」サバイバル方程式(2/2 ページ)

» 2009年03月29日 09時56分 公開
[聞き手 大西高弘,ITmedia]
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情シス部門だけができる仕事とは何か

ITmedia 先ほど、若手部員の話が出ましたが、ここまでうかがってくると、中堅以上の部員も深刻な状況であることは分かっているのではないでしょうか。

 確かにそうですね。1980年代に情シス部門に入った人たちは、自分たちでシステムを作ってきたという経験を持っています。しかし、次第にパッケージソフトの性能も上がってきて、必ずしも情シス部門がSIerとユーザー部門の間に立って調整する必要はなくなってきたわけです。過去を知っている人は、「このままではまずいな」と考えていると思います。

ITmedia 時代が変わったのだからIT部門は各部門に吸収されてもしょうがないというわけでもないわけですよね。それでは、全体の業務プロセスを最適化することなどが難しくなってしまう。

 実際、情シス部門は縮小して実行部隊は、関連会社に移すというケースも増えています。ただ、こういう時代になって、本当はITの役割はますます高くなっているし、適切なIT投資をしなければ会社の競争力が弱まることは、多くの経営者が知っています。ただ情シス部門は今のままでなくてもいいのではないか、と考えられているふしがある。

ITmedia では、情シス部門にいる人たちは何をすればいいのでしょうか。どういう戦略でこれから進んでいけばいいのか。

 例えば、「5年後情シス部門はどうなっているの」と経営者に聞かれたときどう答えるかです。明確に答えられる人がどれだけいるでしょうか。私は、これから5年ぐらいかけて、人事部門と一緒になって、各業務プロセスの仕組みとそこにいるキーマン、そしてキーマンの仕事を把握するという方向に向いていくべきだと思います。人事部門は通常、個々の業務プロセスは把握しないし、そこのキーマンが誰で、その人物がどういう仕事をしているかまでは調べないものです。あらゆる部門の業務に関して人も含めて情報を持っているのは情シス部門だけなんです。会社全体の業務プロセスの最適化は、今非常に注目されていますし、実際ここに手をつけていかなければ競争に勝つことができなくなる。

ITmedia 何か環境の変化が起こったとき、新しい部門のリーダー、サブリーダーは人事部門が主役になるでしょうが、実際の業務のキーマンは誰が最適か、ということは確かに情シス部門が最も情報を持っているでしょうね。

 情シス部門は恒常的に業務プロセスとITに関して多くの部門にかかわり、部門間の連携でもかかわります。業務を回すキーマンとその仕事内容を知っていないと、うまくいくものもいかなくなる。何かイベントがあって、一定期間だけ各部門にかかわるだけでは、業務の本質は見えてこないんです。そういう意味で、すべての現場を知っている情シス部門だけが、現場の人事の最適化にかかわれるのだと思います。

ITmedia しかし、いきなり現場の人事にかかわるというのは、なかなか表立って表明ではない戦略ですね。

 もちろんです。今まで以上に、各部門にITサービスの提供を行っていき、現場の変革が行われようとする時に、必要な情報を提供するわけです。そこで提供された情報が現場の改革にうまく機能していけば、それは情シス部門だけができる仕事になります。ただし、現場に関する情報提供は表の仕事ではないです。

ITmedia 裏稼業、ですね。でも、これは単なる部門の生き残り策ではなく、会社の生き残り戦略でもありますね。

 成果が上がっていけば、裏ではなくなりますよ。ただ、こうした戦略を持って仕事をしている情シス部門はまだ少ないと思います。「業務の継続性を担保するための情報戦略」とでもお題目を作って、今後5年ぐらいかけて地道に活動をしていけば、少しずつ変化が出てくると思います。

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プロフィール

たいら・やすひこ 大手コンサルティング会社、ITベンダー勤務を経て、独立。米国および日本企業のSOX対応プロジェクトに参画。現在、ITコンサルティング会社「ビジネスアクセル」代表。


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