現場で効くデータ活用と業務カイゼン

阪大の産学連携プログラム、受講生管理はFileMakerで「環境リスクマネジャ」を育成(2/2 ページ)

» 2009年06月24日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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プログラム内容に合わせ柔軟に対応できるデータベースを採用

バルーンヘルプ 総務部 渡辺博美氏 バルーンヘルプ 総務部 渡辺博美氏

 委託されたのは三菱電機ビジネスシステム。同社には教務事務パッケージソリューションもあるが、今回のプログラムにはそれが相応しくないと判断し、専用のシステムを新たに開発することとした。完全な定型業務ではなく、変更が繰り返されていくため、システムには高い柔軟性が要求されるのである。普通のパッケージでは対応できないだろう。

 柔軟性にすぐれ、かつ使い勝手の良いデータベースとして、三菱電機ビジネスシステムはFileMakerの採用を提案した。そして、FileMakerを利用したシステム開発を通じて3年ほど前から関係のある、バルーンヘルプと共同で構築することにしたのである。

 バルーンヘルプは、FileMakerでの開発をほぼ専門に手掛け、規模も業種も多様なユーザーに対し、システムを提供してきた企業だ。もちろん社内でもFileMakerが使われており、事務作業で日常的に使っている同社総務部の渡辺博美氏も、「入社するまではFileMakerのことを知りませんでしたが、すぐに慣れ、使えるようになりました。」と話す。

 業務そのものの仕様が完全に固まっていないという事情から、今回のシステム開発に際しては、その手順についても通常とは異なるものとした。

 「業務システムを構築する際には、ユーザーへのヒアリングなどを通じて仕様書を作り上げるところからスタートするのが基本ですよね。われわれも、基本的にはそういった構築手法を使っています。しかし今回のケースでは、その手法は合わないと考えました」と、三菱電機ビジネスシステム 関西支社 ソリューション推進部の竹村暢孝 部長は振り返る。

 まず取り組んだのは現状把握。すなわち複雑なExcelワークシートを読み込み、そのデータ構造を把握することだった。そして大阪大学側からのヒアリングを実施、その内容を要約して、必要とする機能を列挙した後に、プロトタイプを作成しつつ構築を進めていった。

 「FileMakerの場合、作りながら見せることができます。先に仕様書を作ることができない今回のようなケースには、その点が大きなメリットになっています」(竹村氏)

“柔らかい”設計で変化に対応

三菱電機ビジネスシステム 関西支社 システム営業第一部 渡邊一平氏 三菱電機ビジネスシステム 関西支社 システム営業第一部 渡邊一平氏

 三菱電機ビジネスシステム側で、初めてFileMakerを扱ったというのが関西支社 システム営業第一部の渡邊一平氏。入社4年目の若手である彼は、FileMakerの使い勝手の良さに驚いたという。

 「データベースから受講生へメールを送信したり、卒業証書を作ったりといった、帳票類を作るのが簡単にできるなど、汎用性が高いと実感しました。また今回のシステムは手作りなのに、短期間で完成したという点も、強く印象に残りました」

 渡邊氏のコメントの通り、開発は短期間のうちに進んだ。開発の実作業は2008年8〜9月頃に行われ、10月にはプロトタイプが完成したという。

 開発実務を担当したバルーンヘルプの浜地直美 代表取締役も、「開発は非常にスムースでした」と話す。

 「画面イメージのプロトタイプを最初に作ったことで、ユーザー側にも安心感があったと思います。その上で、要望などを聞き出してシステムに盛り込んでいきました」(浜地氏)

 同年12月、期の途中だったが、試験的にFileMakerの利用を開始した。そして翌年4月から本格的な運用がスタートしている。FileMaker上のデータベースには、Excelワークシートで管理していた情報のほとんど全てが移行された。サーバ1台、クライアント5台の環境で、事務職員がデータ入力や編集を行っている。これまでの複雑なワークシートから大きく変わって、シンプルな画面になった。織田氏は、その使い勝手を次のように評価している。

 「FileMakerの画面には、最初にちょっと違和感を覚えた職員もいたようですが、ほとんど問題なく使えているようです。入力すべき項目をプルダウンで選べるようになったなど、使い勝手は大きく向上しました。また、受講生や協賛企業にメールを送付する際、以前であればワークシートから転記する必要がありましたが、今はきちんと連携されているので、ミスの心配もありません」(織田氏)

 一方、松井氏は、システムの柔軟性や、画面の見やすさを高く評価している。

 「カリキュラムは毎年変更される部分があるので、そこは柔らかく作ってもらっています。この作り方は、FileMakerでないと難しかったでしょう。なお、わたしたち教員側にとっては、新しい手法を作り上げるプログラムの常として文科省や他の教員などに対してプレゼンをする機会が多いのですが、FileMakerのきれいな画面で内容を示せるようになったというのも、大きなポイントだと感じています」(松井氏)

 今後のシステムについての期待も出てきている。Webで受講生向けにカリキュラムを公開する際など、FileMakerから自動的に出力できるようにする機能なども、検討が進められているという。FileMakerを使ったのは久し振りという松井氏は、今回のシステム構築を受けて、さらにいろいろな展開を考えている。

 「学内でFileMakerを使ったシステムは他にありませんので、横展開することも考えています。また、我々のところには動画コンテンツや図書管理などのシステムもありますので、今後はそれらとの連携も期待したいですね」(松井氏)

大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 教務事務管理システム 大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 教務事務管理システム
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