NECとマイクロソフト、協業拡大の背景Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年07月06日 09時49分 公開
[松岡功ITmedia]
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NECの基幹システム全面刷新が発端

 まさしく両社の新たな合弁プロジェクトとしてスタートした今回の協業拡大。実はその背景には、NECが現在進めている社内の一大プロジェクトが大きく関与している。

 その一大プロジェクトとは、社内基幹システムの全面刷新である。同社では2011年度までにおよそ400億円を投じてSAP製ERPシステムを全面導入し、社内組織のみならずNECグループの国内外の主要関係会社もカバーする基幹システムの再構築を進めている。

 この新たな基幹システムの基盤を担うのが、今回の協業拡大でもベースとなっているWindows Serverベースシステムである。

 基幹システムの全面刷新については、3月2日にプレス発表されている。その中で同社は全面刷新によって、「グループ内の関連システムをデータセンターに統合・集中化し、クラウド指向のサービスとして提供することでTCOの大幅な削減を実現するとともに、このノウハウをベースにクラウド指向の幅広いサービス事業を展開していく」と表明している。その手始めともいえるのが、今回の協業拡大で投入された新ソリューションである。

 新基幹システムは、2010年4月に経理、2011年4月に販売・購買のシステムのサービスインが予定されているが、その過程でパターン化され、検証されたシステムを「システムモデル」としてソリューションメニュー化していこうというのが、両社の協業拡大の目論見だ。

 今回の両社連名のプレス発表文の最後に、こんな表記がある。

 「両社はこれまで幅広い協業活動を行ってきた。今回のシステムモデルをベースとしたソリューション領域における協業は、こうした協業範囲をさらに拡大し、両社による包括的なソリューションの提供を可能にするものだ」

 さらに、こう記されている。

 「両社は今回の新たな協業により、今後のクラウドコンピューティングの進展を見据え、システムを高品質、迅速かつ低コストで構築する体制を整え、顧客の経営革新に貢献するシステム・サービスの提供をグローバルに展開していく」

 両社による包括的なソリューションとは何か? グローバル展開を本当に目論んでいるのか?

 とくに後の一文は、今後の方向性について両社間で入念なすり合わせがあったのでなかろうか。基幹システムの再構築をもとにスタートした特異なケースの合弁プロジェクトが、今後どのように発展・拡大していくのか注目したい。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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