HPが一石を投じたクライアント進化論Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年10月13日 08時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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3種類が混在する企業のクライアント環境

 「Microsoft Officeは、今後もしばらくクライアント上で動作するアプリケーションとして使われるだろう。だが、最近ではMicrosoft OfficeをWebブラウザ上で利用できるサービスも出てきている。例えば、Webブラウザ上でデスクトップ環境を提供しているStartforceというサービスを利用すれば、Webブラウザ経由でMicrosoft Officeを使えるようになる」

 こう語った九嶋本部長は、「Startforceのようなサービスが普及すれば、クライアントのあり方が大きく変わってくるのではないか」との見方を示した。

 では、企業のクライアント環境は今後、HPが今回投入したようなクラウド専用端末が主流になっていくのか。九嶋本部長は、HPが描くクライアント環境の進化の方向性をこう語った。

 「すでにほとんどのアプリケーションがWeb化されている大手企業にとっては、今後クラウド専用端末のニーズが確実に高まってくるだろう。また、これから本格的にWeb化を進める中小企業ユーザーにとっては、クラウド専用端末を一気に採用する絶好の機会になるかもしれない。そう考えていくと、クラウド専用端末は将来的に、クライアントの究極の姿だといえる」

 と、ここまでは新端末の発表会見ということもあって、クラウド専用端末の将来性を強くアピールした九嶋本部長だったが、「まあ、そうは言っても……」と、次のように現実的な見方を示した。

 「今回、HPがクラウド専用端末を投入したことで、企業のクライアントはPC、そしてシンクライアントに代表されるリモートクライアントと合わせて3種類になった。クラウド専用端末がクラウド時代のクライアントとしては究極の姿ではあるが、大きく偏ることなく3種類が混在する中で全体のクライアント環境の最適化が図られていくことになるだろう」

 PCもシンクライアントも市場をリードする立場にあるHPとしては、「これからはクラウド専用端末が主流になる」とは言い切れないところだろうが、九嶋本部長によると、アナリストの見方でも「2013年を目処に、クラウド専用端末とリモートクライアントを合わせて、企業のクライアント全体のおよそ1割を占める」程度だとか。

 「だたし、HPの期待としてはもっと大きい。それこそ、HPを含めたソリューションベンダーの腕の見せ所だ」と九嶋本部長は会見を締めくくった。

 「第3のクライアント」としてHPが投じたクラウド専用端末。競合ベンダーもすぐさま追随するだろう。HPの投じた一石が、どのような「クライアント進化論」に発展するか。注目しておきたい。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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