サイボウズとマイクロソフトの協業にみる日本製ソフトの新たな可能性Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年06月07日 08時34分 公開
[松岡功,ITmedia]
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SharePoint Server市場を足がかりに海外展開へ

 プラットフォームとアドオン、大手と中小ユーザーと、製品的にも市場的にも補完的な関係にあるという両社だが、もう1つ、この協業で注目されるのがCybozu SP Appsのグローバル展開だ。ベースとなるSharePoint Serverは、ビジネスコラボレーション基盤ソフトのグローバルスタンダートとなりつつある。そのアドオンのグループウェアとして認知されれば、世界中で使ってもらえるチャンスが広がる。

 「今回の協業は、まず日本市場でより多くのユーザーにSharePoint ServerおよびCybozu SP Appsを使ってもらえるようにするのが目的だが、すでに世界中に広がっているSharePoint Serverの市場を足がかりに、Cybozu SP Appsもグローバル展開できる可能性は大いにある。私としても、日本発のソフトがグローバル市場にどんどん出ていけるよう支援したい」

 マイクロソフトの樋口社長は、こう言ってサイボウズにエールを送った。

 サイボウズの青野社長も、グローバル展開には意欲満々だ。

 「グローバル市場に打って出たいというのは、当社の長年の悲願。2001年には米国に現地法人を設立したこともあるが、商習慣の違いを目の当たりにし、自分たちだけの力では切り開けない市場だと痛感して戻ってきた経緯がある。今回のマイクロソフトさんとの協業で、そうした自分たちだけの力では切り開けない市場への再挑戦が始まったと思っている」

 グローバル市場への進出――それはサイボウズだけでなく、日本のソフト会社の多くが思い描く悲願でもある。その意味では、いまグローバル市場で最も勢いのあるSharePoint Serverのアドオン戦略に出たサイボウズの狙いは、的を射ているといえそうだ。マイクロソフトによると、米国でもSharePoint Serverのアドオン製品は続々と登場しており、同社もパートナー連携の仕組みづくりに力を入れているという。

 ただ、Cybozu SP Appsとして当面出てくる製品は、日本の商習慣に見合った機能や操作性を付加したものだけに、グローバル展開となると、サイボウズならではのユーザーインタフェースは売りにしながらも万国に通用する形にしなければならないだろう。

 そうした見方をあるソフト会社の首脳に話したところ、こんな言葉が返ってきた。

 「いや、万国に通用するものという考え方より、効率の良い業務の進め方やきめ細かいサービスの仕方といった日本の商習慣の良いところをグローバルに広めてやろうというくらいの気概が必要ではないか」

 そう考えると、サイボウズとマイクロソフトの協業からも、日本製ソフトの新たな可能性が感じられる。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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