「iPhone 4の高額な販売奨励金のせいで携帯キャリアは業績の下方修正を余儀なくされるだろう」――デンマークのコンサルティング会社はこのように主張している。
米AppleのiPhone 4はアンテナの問題は別として、批評家や消費者に概ね好評を博しているが、このAppleの最新スマートフォンは携帯電話キャリアにとって、iPhoneのこれまでのモデルと同様の問題を引き起こすだろう――。デンマークの無線通信コンサルティング会社Strand Consultは7月5日付の報告書で、そう指摘している。
Strand ConsultはiPhoneが携帯キャリアに及ぼす影響について、2009年8月にも報告書を発表しているが、今回はその内容を引き継ぐ形で、次のように警告している。「iPhone 4は過去と同様の問題を改めて引き起こすことになるだろう。そして、おそらく業界では再び、新しいiPhone 4の高額な販売奨励金のせいで携帯キャリアが業績の下方修正を余儀なくされる事態が発生するだろう」
そしてStrand Consultは、携帯キャリアが金銭的な観点からiPhone 4を考察する上で着目すべき6つのポイントを指摘している。
まず1つは、iPhone 4の価格はこれまでのモデルと大差ないため、購入を促す追加の要因に欠けているという点だ。2つ目は、iPhone 4の新しいデザインはこれまでのモデルとそれほど大きく異なるものではないため、その点でも、あまり大きな購入の動機にはならないという点。そして3つ目は、iPhone 4の登場によって多くの新規加入者が携帯キャリアの窓口に押し寄せるようなことにはならないと予想される点だ。
「新しいiPhoneを購入するのは、ほとんどが既存のiPhoneユーザーということになるだろう」と報告書は指摘している。
続いて4つ目のポイントは、iPhoneをアップグレードしようという既存の顧客が、iPhoneを初めて購入しようという新規の顧客と比べてはるかに多いという事実が、携帯キャリアにどのような影響を及ぼすかという点だ。「おそらくiPhone 4はマイナスの意味で携帯キャリアの解約を促すことになり、その結果、携帯キャリアが負担する販売奨励金や取扱手数料のコストだけがうなぎ上りで増えることになるだろう」と報告書には記されている。
Strand Consultは前回の報告書においても、iPhoneが携帯キャリアに及ぼすマイナスの影響に言及し、その影響は一部の携帯キャリアだけでなく全体に及ぶものだと指摘している。
「われわれが世界の携帯電話事業者を対象に実施した調査によると、iPhoneの販売を手掛けたことで市場シェアや売上高、収益を伸ばせたという会社は1社もない。それどころか、iPhoneのせいで業績の下方修正を余儀なくされている事業者もあるくらいだ」とStrand Consultの2009年の報告書には記されている。
「ただし、iPhone 4の恩恵を受けることが予想される企業はAppleだけではない」とStrand Consultは指摘している。iPhone 4は従来の携帯キャリアを苦境に陥れる一方で――顧客は最新モデルにアップグレードして、古いモデルを友人や家族に売るなり譲るなりするだろうから――仮想移動体通信事業者(MVNO)には恩恵をもたらすことが予想される。MVNOとは、大手の通信事業者からネットワーク設備を借り受けて、独自ブランドでSIMカードを販売している業者のことだ。
「古いiPhoneを新たに手に入れたユーザーは、音声とデータのサービスをいちばん安価なところから購入することになるだろう。つまり、多くの国では、iPhoneユーザー向けに余分なサービス抜きでSIMオンリーのサービスを販売しているMVNOから、ということになる」と報告書には記されている。
Strand Consultが最後に指摘しているポイントは、Appleは強力なスマートフォン製品を投入し、広く一般からは、この業界の大将のように思われているが、実際のところ、同社に対する注目の高さは同社の市場シェアには不相応なものだという。
「現在、世界のiPhoneユーザーの総数はポーランドの人口と同じくらいだ。世界の携帯電話ユーザー数が11億人増加した間に、Appleは5100万台しか携帯端末を販売していない。同じ期間に、そのほかのメーカーが販売した携帯電話は34億台以上にのぼる」と報告書は指摘している。
「iPhone 4は結局のところ、多くの携帯キャリアにとって“お金のかかる新しい友人”となるのが落ちだ」とさらに報告書は続いている。これは、米国で現在iPhoneを独占販売しているAT&Tにとっては喜ばしいニュースではない。ただし、Verizon Wirelessは今のところ、自由の身だ。Verizon Wirelessは、AT&TのiPhone独占販売契約が期限切れとなる2011年1月にiPhoneの提供を開始するとみられている。
「携帯キャリアにとっては、iPhoneの顧客ベースが大きければ大きいほど、そして古ければ古いほど、iPhone 4によって生じるコストも大きくなるはずだ。今後、Appleの元からの大手のパートナー各社の多くは解約率の増加に見舞われ、向こう数カ月間は、販売奨励金や取扱手数料にかかるコストが業績にマイナスの影響を及ぼすことになるだろう」とStrand Consultは報告書で指摘している。
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