すべてのワークロードを1台で処理するために開発されたIBMの最新メインフレームは、UNIXサーバやx86サーバを従えた連合艦隊として、新たな局面に入ろうとしている。
「論理的にはクラウドであり、『Cloud in a box』だ」――日本IBMが7月23日に報道関係者に披露したSystem z、つまりメインフレームの最新機種「IBM zEnterprise」は、ハイブリッドなシステムアーキテクチャを採用した意欲的な製品となった。
System z10の後継となる同製品は、大きく分けると2つのハードウェア、2つのソフトウェアがポイントとなる。ハードウェアとしては、メインフレームの「IBM zEnterprise 196(z196)」と、「IBM zEnterprise BladeCenter Extension(zBX)」と呼ばれる拡張フレームで構成される。
z196は動作周波数5.2GHzのクアッドコアプロセッサを24個(96コア)、メモリは最大3Tバイト搭載する「史上最強の」メインフレーム。同じ消費電力で比較すると、z10と比べて性能が60%向上しているという。
zBXは、2台のBladeCenterシャーシが搭載可能で、POWER7を搭載するブレードサーバ「BladeCenter PS701」とx86プロセッサ(Xeon 7500番台が搭載される見込み)を搭載するブレードサーバを格納できる。z196とはギガビットイーサネットで結ばれ、InfiniBandの採用も計画しているという。拡張性としては、1台のz196に対し、4台のzBXが接続可能で、この構成を8セットまで拡張できるという。
x86ブレードサーバについては開発意向を表明しており、IBM BladeCenter HX5とは別のx86ブレードサーバの登場が予想される。なお、zBXは、従来モデルのz10と接続可能なモデルも用意されている。
z196を戦艦とするなら、zBXはさしずめ巡洋艦で、それらが艦隊と化して現在のIT環境が抱える複雑性――特性が異なるトランザクションの効率的なハンドリングや運用管理など――を解消しようとしている。メインフレームでの処理とオープン系での処理を1台で行ってしまおうとアプローチは、見方を変えれば、オープン系での処理にメインフレームが有する高いサービスレベルを与えるものとみることもできる。
メインフレーム、UNIXサーバ、x86サーバを1台に集約し、メインフレームの高いサービスレベルをx86やUNIXに拡張しながら、それぞれのワークロードに対し、ポリシーベースでリソースを配分するというアーキテクチャを採用したSystem zの最新機種。これを担うソフトウェアが、統合管理ソフトウェア「IBM zEnterprise Unified Resource Manager(URM)」だ。URMは主にハードウェア資源の配分と仮想サーバ周りの管理を行うもので、その上のサービス管理は、Tivoli製品などを用いて行うという。
もう1つソフトウェア面で注目したいのは、「IBM Smart Analytics Optimizer for DB2 for z/OS」。これは、zEnterpriseで利用可能なアクセラレータで、DB2のクエリ処理をzBX側のノード上にあるメモリに展開し、高速に並列処理しようというもの。情報系のシステム、特にDWH/BIなどのワークロード、あるいは、動的SQLや関数を使用するバッチワークロードなどで、大幅な速度向上が期待できる。こうしたアクセラレータはそれぞれの用途で用意する意向だとし、具体的には、SOAでデータを運ぶ主役となるXMLのアクセラレータを筆頭に、HPC領域に向けたアクセラレータなども予定しているという。
z196の市場投入は9月10日、zBXとIBM Smart Analytics Optimizerは11月19日に投入するとしている。zBXに搭載可能なx86サーバの投入は2011年になる見込みだ。日本IBM、システムz事業部長の朝海孝氏は「年内には2ケタ以上(の受注)を目指す」とITの進化を上回る速度で進化したSystem zの最新機種に自信を見せている。
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