ビッグデータ時代のIT管理者に求められる役割とは?

システムの複雑化やデータ量の増大といった課題に対し、企業のIT管理者はどのような手段を取っていくべきか。日立製作所への取材から、今後のIT部門に求められる役割を探った。

» 2013年07月05日 08時00分 公開
[取材・文/編集部,ITmedia]

 サーバ仮想化は、企業のITインフラ構築/運用を簡素化する手段として2000年代から急速に普及してきた。だが近年、サーバ仮想化を導入した企業から共通の悩みが聞かれるようになりつつある。それは、物理と仮想の混在環境におけるシステム運用管理の難しさだ。

 「部分的にサーバ仮想化を積み重ねてきたことで、結果的にシステム全体の運用負荷が高まってしまっているケースが散見される」と、日立製作所の青島達人氏は指摘する。この課題に対し、システム管理者の数を増やして対応するのは本末転倒である。なぜなら、コスト削減のために仮想化を導入した本来の意味がなくなってしまうからだ。

 また青島氏によると、現在ではこうした課題に加え、システム管理者を悩ませる新たな課題も表れつつあるという。それは、企業が扱うデータ量の増大――いわゆる“ビッグデータ”の台頭である。

photo 日立製作所で「JP1」部門トップを務める青島達人氏(情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 開発統括本部 統合PF開発本部 担当本部長)

 「ビッグデータの活用に向け、従来なら集めていなかったデータも収集したいという企業ニーズが高まりつつある。だが、そうして企業が扱うデータ量が増大すると、これまで以上にシステム管理者の負荷が高まってしまうのだ」(青島氏)

 仮想化によって複雑化したシステムとデータ量の増大。この2つの課題に対し、企業の情報システム部門はどのような方法で対処すべきか。青島氏はまず前者について、運用管理のプロセスそのものをシステムによって自動化するというアプローチを提案する。

 例えば、同社が提供するIT運用自動化製品「JP1/Automatic Operation」を利用すれば、物理/仮想環境が混在するシステムの定常運用や障害対処といった定型業務のほか、複数の仮想マシンを立ち上げるといった複雑な業務も自動化できる。「それまで管理者が行っていた業務をシステムに取り込むことで、人手を増やすことなくシステム管理の煩雑化に対処できる」と青島氏は強調する。

 また、企業を取り巻くデータ量の増大に対しては、サーバだけでなくストレージやネットワークを含めたITインフラ全体の見直しが有効という。ITインフラ全体を見直す方法はいくつかあるが、青島氏によると、特に効果的なのは“垂直統合型プラットフォーム”と呼ばれる製品の導入だ。

 垂直統合型プラットフォームとは、サーバやストレージ、ネットワーク製品などのハードウェアとソフトウェアを統合し、性能調整を施した状態で出荷するインフラ基盤製品だ。構成の自由度が制限される代わりにハードウェアの性能バランスが最適化されているため、個別の製品を組み合わせる場合と比べてデータ処理の高速化が見込めるといったメリットがある。

 このほか、垂直統合型プラットフォーム製品にはシステム管理者の負担を減らせるメリットもあるという。例えば、複数拠点で展開しているITインフラを容易に標準化できるほか、サーバ、ストレージ、ネットワークを一元管理できる。

 同社は垂直統合型プラットフォーム製品として、国内では2012年から「Hitachi Unified Compute Platform」(UCP)を提供している。特に、提供製品の1つである「UCP Pro for VMware vSphere」は、仮想環境管理ソフト「VMware vCenter」の画面上でサーバ、ストレージ、ネットワークを一元管理でき、企業は仮想サーバの新規作成や構成変更の手間やコストを削減できるという。

システム運用管理者に求められる役割とは?

 一方、こうした運用自動化製品や統合プラットフォームの導入が進めば、自分の仕事が奪われるのでは――と考えるシステム運用管理者も少なくないだろう。だが青島氏は「データ量の増大やシステムの複雑化に伴い、IT部門の仕事は急激に増えている。どんなに自動化が進んでも、運用管理者の重要性は変わらない」とみる。

 ただし、その前提として青島氏が挙げるのが「運用管理者による付加価値の提供」だ。つまり、システムにできることは可能な限り自動化し、それ以外の“人間にしかできない仕事”にフォーカスすることが求められるという。

 こうした方向性を踏まえ、同社は今秋発表予定のJP1の新バージョンで、システム運用管理の自動化機能を一層強化する予定という。青島氏は「システム運用管理の自動化が進展していくのは間違いない。日立は自動化製品の提供を通じ、IT部門が付加価値の高い業務に集中できるよう支援していく」と話している。

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