決断力がつき、決断の精度も上がってきたら、決めたことを現実にしなくてはなりません。
私は一緒に仕事をしたメンバーから時折、
「山崎さんは白でもそれを黒だという、そしてなぜだかだんだん黒に見えてくる」
と(冗談まじりですが)言われることがあります。
これだけ聞くとなんだかひどい話に聞こえますが、確かに思い当たるフシがあります。決めたことを、ある意味、周りを見ずに実現しようとするので、コミュニケーションの上でそういう風にとられることがあるのだと思います。
ただし、単に「白を黒」といっているのではなく、極端に言うと、「『黒と決めたら白でも黒にする』というスタンスでやる」ということなのです。
「どうにかしてでも結果を出す」「自ら正解を作る」というスタンスは、リーダー本人の執念からくるものでしかありません。けれども、私は実現の力を高めていくためのキーポイントは、ここにあるのではないかと考えています。
当たり前ですが、100%成功するロジックのある決断なんて恐らくできないでしょう。完璧でない決断をしているという前提で、一度決めたことをどうにかして正解にするためには、「実行精度」を向上する必要があります。
どうしてそのマインドが大切かというと、実行精度を高めるには、大小さまざまな決断の積み重ねとともに、それに対するネガティブチェックが必要不可欠で、そこには強い「結果への執念」が伴わなければいけないと考えるからです。
ネガティブチェックとは、自分が一度決めたものや、チームが寝る間を惜しんで作ったアウトプットを、「リセットボタンを押すような気持ちで」本当にこれでいいのか、これで成功するのか、ビジョンは達成されるのか、ぶれていないのか、ほかに方法はないかをあらゆる角度、方法で検証し、手直ししていく作業のことです。
自分でアウトプットを見直していくことももちろんですが、例えば、Webプロダクトの場合は、ユーザーテストを行ったり、いろいろな知見を持った人に率直な意見を聞いたりなど、数多くの客観的視点を取り込むことが、この工程ではポイントだと思います。これにより、決断したことが多少間違っていても、実行精度は上げられるのです。
実際、私と一緒にプロジェクトを行ったメンバーに、あまりにも私が何時間も、何回もネガティブチェックをするのでびっくりした、と言われたことがあります。
ただし、この工程においては、自分が決めたことや言ったことをくつがえすことになりかねないので、その場では反発を招くことがほとんど、といっても過言ではないです。
ポジティブにプロジェクトを推進することに長けていて、このような土壇場のネガティブチェックが苦手な人はかなり多いはずです。
そう考えると、自分が決めたことや言ったこと、やったことが完璧でないという前提に立ち、ネガティブチェックを踏まえて実行精度を高めていくというのは、どうにかして正解を作るというスタンスや、結果への執念が成せる技であるように思います。
例えば、私が手掛けたコミュニティサービス「きいてよ!ミルチョ」は、約3カ月の開発期間を経た後、リリース3日前の社内テストの結果を受けて、メインUI(ユーザーインタフェース)の全面変更と、新機能の追加を急遽行いました。実は、こういう土壇場の一手が、プロジェクト成功の明暗を分けたと実感する場面が何度もありました。
決断力と、それに伴う結果への執念をセットで持つこと
これによって実績を作っていくことで、決断力⇔実行力は振り子のように強化されていくのだと思います。
今回の記事で、ここまでに「決断」という言葉を31回も書いていました(笑)。私もまだまだ磨いている途中ですが、決断力を高めれば、仕事の質は格段に変わるのではないでしょうか。
次回は、プロジェクトマネジメントにおいて大切なもう1つの要素である「チームビルド」について、お話していきます。
【編集部からのお知らせ】連載「Ameba初代プロデューサーが語る “燃焼系”プロマネ論」はしばらく休載させていただきます。(2014年2月13日更新)
山崎ひとみ
株式会社サイバーエージェント
Ameba事業本部 ママ事業部 事業部長
2007年サイバーエージェント入社。「アメーバピグ」の立ち上げを行い、チーフプロデューサーを経たのち、アメーバ事業本部スマートフォンDivisionの立ち上げに参画。2012年より、新感覚コミュニティサービス「きいてよ!ミルチョ」の開発プロデューサーを務め、現在は、同じくアメーバ事業本部 ママ事業部の事業部長として、新規事業の立ち上げに携わっている。
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