一方で、一筋縄でいかないのが標準営放システムのクラウド提供だ。「基幹業務システムであるため、止まってほしくないときに止まらないものでなければならない。しかしながら、今までのシステム構成やアプリケーションアーキテクチャのままでは安心感を訴求できなかった」と丸山氏は振り返る。特にネットワーク(WAN回線)の寸断や、センターにあるサーバの停止、パフォーマンスの悪化などが不安要素として強く、クラウド環境で標準営放システムを稼働するにはさまざまな改善が不可欠だった。
そこで、アプリケーションやネットワークのアーキテクチャを再構築したほか、データセンターの運営やコストについても細かく検討を重ねた。その結果、各レイヤーで以下のような機能やサービスを実装していった。
アプリケーションアーキテクチャ
クラウド基盤
アプリケーションサービス
ネットワークサービス
セキュリティサービス
運用サービス
こうして完成したのが「FNS標準営放システムV2」である。2013年3月に稼働を開始し、同月には山陰中央テレビが採用。その後、今年10月までに計23社が利用している。残りのフジテレビ、関西テレビ、東海テレビ、テレビ大分、テレビ宮崎の5社は独自システムを利用している。
なお、系列局全体が標準システムを共同利用しているのはFNSだけで、ほかの系列はまだ検討段階にあるという。このたびのシステムのクラウド化によって、その差はますます広がったといえよう。
ではなぜ、FNSはこうした取り組みが可能だったのか。丸山氏は「歴史的に見てフジテレビ系列は民放テレビ局の中では後発であったため、前を行くテレビ局に追いつけ追い越せの精神でやってきた。そのためには系列各社がバラバラではなく一丸となって事業を伸ばす文化が元々あった。その上で、他局に先駆けて新しいことをやろうという考えがあったことが大きい。IT投資においても同様だ」と説明する。
今後フィンズでは、このクラウド環境をFNS以外の放送局や一般企業にも提供し、サービスの拡張に努めていく予定だ。
「放送業界の次世代システム基盤を我々がリードし、業界標準システムを作り上げていく。そこで得たノウハウや実績を基に他業界に対してもアピールしていきたい」(丸山氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.