世界中を駆け巡る効率的な働き方とは? ワークスタイル変革に取り組む伊藤忠商事NTT Communications Forum 2014 Report

2010年春からワークスタイル変革を推進している伊藤忠商事。制度面の整備と併せてその実現を後押ししているのが、新たに構築したクラウドのICT基盤だ。効率的な働き方を可能にする仕組みづくりを同社が語った。

» 2014年10月10日 12時54分 公開
[唐沢正和,ITmedia]
伊藤忠商事 IT企画部長の渡辺一郎氏

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は10月9日〜10日の日程で、IT業界向けのプライベートカンファレンス「NTT Communications Forum 2014」を開催した。初日午後の特別講演では、伊藤忠商事 IT企画部長の渡辺一郎氏が登壇。同社が取り組んでいるワークスタイル変革の一環である“効率的な働き方”を支援するため、新たに導入した次世代ICT基盤の概要を紹介した。

 伊藤忠商事では2010年4月に岡藤正広社長が就任して以来、業界の先陣を切ってワークスタイル変革を推し進めており、その中で“効率的な働き方”を通じた現場力の強化に向けて、さまざまな施策を実施してきた。例えば、「無駄な会議・資料の削減」「フレックスタイム制度の全社一律適用の廃止」「朝型勤務制度の導入」などだ。

 「今年5月から正式導入した朝型勤務制度では、20時以降の残業を原則禁止とし、早朝割増賃金の支給や軽食の無料支給を行うことで、翌営業日5時からの早朝勤務へのシフトを推奨した。これによって、終わりのない深夜残業がなくなり、業務の効率化を実現するとともに、前年に比べて時間外勤務手当を約7%削減することに成功した」と渡辺氏。深夜残業から朝型勤務へのワークスタイル変革が大きな成果を上げつつあると話す。

 また、同社は女性社員の活躍も積極的に支援している。1989年から女性総合職の採用を継続しており、2004年からは女性を幹部登用するために数を拡大し、仕事と育児・介護を両立できる環境の整備を進めてきた。「2012年からは、女性総合職が働きがいを持てることに重点を置いた施策に移行しており、育児制度などの運用厳格化や再雇用制度の導入、活躍分野・組織への配置などを実施した。この結果、2013年4月に大手商社初の女性執行役員が誕生した」と、女性社員が活躍しやすい職場環境の整備にも力を注いでいると渡辺氏は力を込めた。

 こうしたワークスタイル変革による効率的な働き方を支えるべく、同社では次世代ICT基盤を新たに構築。具体的には、6月からマイクロソフトの「Office 365」をベースに、在庫確認/チャット/Web会議機能として「Lync」、社内SNS機能として「yammer」、情報共有ワークスペースとして「SharePoint」を一斉導入した。さらに、8月にはメールシステムとスケジューラを「Exchange Server」に切り替えると同時に、モバイルアクセスツールには「Good Access」を導入している。

 次世代ICT基盤の導入効果については、「いままでの社内コミュニケーションは、電話とメールに限られていたが、この次世代ICT基盤によって、相手の状況に応じた適切な手段を選ぶことができ、コミュニケーションロスをなくすことができた。また、社外からでも社内と同じようなビジネス活動が可能になった」と渡辺氏。今後は、伊藤忠グループでの組織の壁を超えた横串での連携を強化するとともに、多様化する社員の働き方を支援していく考えだ。

 この次世代ICT基盤のシステム構成のポイントを渡辺氏は、「最も重要な情報資産であるメールの基盤については、運用面や機密情報を考慮して、NTT Comの『Bizホスティング Enterprise Cloud』を本番環境用のインフラとして導入した。『Office 365』のサービスは災害対策用のバックアップシステムとして待機させ、ハイブリッドの構成としている」と説明する。パブリッククラウドとプライベートクラウドの特徴を生かしたハイブリッド構成のコミュニケーション基盤となっている。

 次世代ICT基盤の導入で苦労した点は、「わずか2カ月でほぼ同時期に一斉導入したため、ユーザーに追いついてもらうのに苦労した」とのこと。また、「使い始める際に、効果的な利活用方法や事例などをユーザーに伝えきれていなかった」ことや、「ITリテラシがあまり高くない年配の経営層に使ってもらうのに苦労した」ことを挙げた。

 伊藤忠商事では今回構築した次世代ICT基盤を第1弾として、次のステップのシステム拡張も計画しているという。

 渡辺氏は、「第2弾のシステム拡張では社外からでも社内の各種業務システムにシームレスにアクセスできる環境を整備する予定だ。これによってさらなる業務効率化を図るとともに、BCP対策や在宅勤務への対応も強化していく」とプランを明らかにした。

 最後に渡辺氏は、「伊藤忠商事はこれからも現場主義を徹底し、“効率的な働き方”を追求していく。そして、情報武装ナンバーワン商社を目指して、引き続きワークスタイル変革に取り組んでいく」と力強く語った。

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