今回の新サービスでは、BIソフトを無料にしたことに加え、それとクラウドサービスのMicrosoft Azureを組み合わせたのも注目点である。利用者にとっては、手元のBIソフトからMicrosoft Azure上に構築されたデータ処理基盤をさまざまな形で活用できるようになる。
Microsoft Azureではビッグデータのリアルタイム処理にもバッチ処理にも対応し、例えばバッチ処理では、あらゆるデータの蓄積(データレイク)から加工(キュレーション)、保管(データウェアハウス)、成型(データマート)といった一連のプロセスを経て、利用者に「取りたいデータを取りやすい形で提供する仕組み」を提供するとしている。(図2参照)
斎藤氏はこの仕組みについて、「Microsoft Azureは、ビッグデータの発生源からそれを有効利用したいお客様に向けての“データのサプライチェーン基盤”だと考えている。今後はこの仕組みを用いて、あらゆる業種・業態、そして業務に有効活用していただけるデータを提供できるようにしていきたい」と説明した。
実は今回の新サービスのビジネスモデルは、この仕組みがミソである。つまり、「Microsoft Azureをデータのサプライチェーン基盤として、さまざまなサービスを提供できる体制が整った。無料のBIソフトで多くのお客様にこの仕組みを利用していただき、当社はさまざまなサービスを提供することでビジネスモデルを確立していきたい」(斎藤氏)ということだ。
この仕組みは、クラウドサービスの種類でいえば、「SaaSの応用形」とも「SaaSとPaaSの融合形」とも見て取れる。かつての携帯電話における「端末無料で通信サービス料に基づくビジネスモデル」と似た形ともいえる。今後の有望市場であるビッグデータ活用をクラウドサービスによるデータ処理基盤の部分でマネタイズする形は、この分野の新たなビジネスモデルになるかもしれない。
一方で、マイクロソフトのこのビジネス展開は、他のBIソフトベンダーにとっては脅威となりそうだ。BIソフトそのもののビジネスが厳しくなり、SaaS化したとしてもデータ処理基盤における規模・性能・機能・価格などを総合した“体力勝負”になる可能性が高いからだ。
その意味では、BIソフト市場、ひいてはビッグデータ活用の市場を変質させる動きともいえそうだ。競合他社を打ち負かしたいマイクロソフトの意図がその点にあるのは明らかである。果たして、今回の新サービスがどれだけ広く受け入れられるか、注目しておきたい。
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